【アジア大会】東京五輪世代が掴んだ銀メダルの価値。今後は過去の五輪と異なる強化策も!?

2018年09月04日 川端暁彦

ヤング森保ジャパンは今大会で何を得たのか?

毎試合激闘を繰り広げ、銀メダルを掴んだU-21代表。真剣勝負の場で多くの経験値を得た。写真:早草紀子

 アジア競技大会の男子サッカーは銀メダルという結果に終わった。
 
 大会の年齢制限であるU-23ではなくU-21の代表を送り込み、3人まで起用できるオーバーエイジ選手も不在。この点から言えば、経験を重視しての参加であることは間違いない。大会前に森保一監督が「4強」を目指すべき目標に掲げたのも「(決勝か3位決定戦を含めて)最大の7試合できるから」という、まさに経験値を求めて臨むが故のものだ。
 
 ただ、実際に集まってきた選手の話を聞き、森保監督は大胆に軌道を修正する。明快に「優勝」という目標を口にするようになったのだ。
 
「(目標は)僕らスタッフが押し付けるものじゃない」
 
 選手が「欲しいのは金メダル」と言うなら、「その背中を押してサポートするのがスタッフの仕事だ」というのが森保監督の取ったスタンスである。その後の態度も思うと、もしかするとわざと低めの目標設定を口にした上で、選手に「これでいいか?」とぶつけたのではないかとも思うが、いずれにせよチームとしてのベクトルは大会直前に定まった。
 
 ——つまり、決勝で韓国に敗れて金メダルを獲れなかった以上、今大会は失敗だったのか?
 
 いや、それこそ短絡というものだ。確かに監督も選手も勝ちにいった大会だ。いろいろな意味で"ガチ"だった韓国を相手に回した決勝でも同じことで、終了後の選手たちの絶望に満ちた表情は、彼らの勝利への純粋な渇望を証明するものでもあった。「年上の韓国が相手なら負けても仕方ない」と思っていた選手は皆無。だからこそ収穫もあった。

 本気で勝ちにいくことで東京五輪自体へのシミュレーション大会になったことが大きかった。連戦を重ねながらの消耗戦は、酷暑の下で中2日の試合が続く五輪でも想定されること。これを最後まで体感できたのは、選手はもちろん、スタッフの経験値という意味でも大きい。
 
 そして、決勝の韓国戦は戦力に差のある相手に対し、防戦メインの戦いを強いられたが、これも五輪では十分にあり得ること。メダルを狙うなら、特に一番良い色のメダルを狙うなら、確実に1回はジャイアントキリングを達成する必要が出てくる。そうした手応えも掴みつつ、同時にチーム・個人ともに課題が見えたのは好材料だろう。
 

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