アジア大会でひと皮剥けたか⁉ 決勝で韓国の”穴”を突いた上田綺世の一発の価値

2018年09月03日 清水英斗

韓国のコーナーキックの守備戦術は、ゾーンをベースに、鍵となる相手2、3人をピンポイントでマークしていた

韓国のマークの甘さを突いて1点を返した上田(15番)。もっと早く決まっていれば!写真:早草紀子

 甘く見られたな……上田。
 
 アジア大会決勝のU-23韓国戦、延長戦に入って2点をリードされたU-21日本代表は、延長後半10分、初瀬亮のコーナーキックから上田綺世が強烈なヘディングを叩き込み、1点を返す。反撃の狼煙を挙げた。
 
 この時、上田はフリー。誰にもマークされていなかった。韓国のコーナーキックの守備戦術は、ゾーンをベースに、鍵となる相手2、3人をピンポイントでマークする方法だ。高さのある選手がゴール前に堅牢な壁を作り、サイドバックやボランチなど小柄な選手がマークを担当する。
 
 当然、マークはミスマッチになりがちだが、彼らの主目的は競り勝つことではない。空中戦の強い相手の動きを制限し、勢いを持って飛び込ませないこと。そして、ゾーンに配置したヘディングの強い選手たちがボールを跳ね返す。理にかなった組織的な分業だ。
 
 ただし、マークするのは2~3人なので、他の相手はフリーになる。放っておくのは不安感もあるが、実際のところセットプレーで点を取る選手は、どのチームでもほぼ決まっている。それ以外の普通の選手なら、たとえ勢い良くフリーで走り込まれても、ゾーンの選手で競り勝てる、という計算が立つ。実に合理的な戦術だ。
 
 筆者がこの戦術を初めて見たと記憶しているのは、グアルディオラ時代のバルセロナ。ジェラール・ピケのような空中戦のエースが、マーク担当から解放され、ボールに集中して跳ね返す役割に徹することができる。最近はプレミアリーグでも多く見かける戦術であり、U-23韓国代表も採用していた。
 
 そしてこの試合、日本の選手でマークされたのは、立田悠悟、板倉滉、原輝綺の3人。延長戦に入り、神谷優太が投入されると、神谷にマークが変わり、原は外れた。その間、上田はずっとフリー。
 
 君ならやると、思っていた。延長後半10分、ニアサイドへ走り込み、ゾーンで守っていた13番のDFチョ・ユミンの前に出て、身体をぶつけながら強烈なヘディングをぶち込んだ。A代表で正GKを務めるチョ・ヒョヌが、一歩も動けず。
 
 この大会を通して上田からストライカーの本能を感じていた筆者としては、「甘く見られたな……上田」と、ほくそ笑むゴールだった。彼は前半からずっと狙っていたが、途中出場の初瀬によって、ついに精度の高いボールが届けられた。ちなみに、このゴールで2-1になった後、韓国はマークを4人に増やし、上田もマーク対象に入っている。
 

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