【横浜】イニエスタのバルサ愛にも匹敵!? 喜田拓也の揺るぎない“マリノス愛”

2018年08月25日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「自分たちが下を向くわけには絶対にいかない」

天皇杯・4回戦の仙台戦では1得点。こぼれ球を拾い、目の覚めるような豪快ミドルを突き刺した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 差し出がましいようだが、時々心配になる。
 
 試合に負ければ、ろくにコメントせずミックスゾーンを後にする選手もいる。その気持ちは理解できるし、そういう態度を非難するつもりはないが、一方で、どんな試合結果でも声をかければその場で足を止めて、真摯に受け答えする選手がいるのもまた事実だ。
 
 横浜の喜田拓也もそのひとり。ただ、負けが先行し低迷する今季は、曇りがちの表情で受け答えすることが多い。すべての責任を自分が背負っているかのように、申し訳ない、と繰り返す。それで済む問題じゃないのは分かっている、とも。
 
 だから、時々心配になる。あまり自分を追い詰めないほうがいいのではないか、と。
 
 そう伝えると、喜田は静かに言う。
 
「でも、俺、本当にマリノスが好きだから」
 
 横浜の下部組織出身で、プロになるまで育ててもらい、現在に至る。そんな愛するクラブを降格させるわけにはいかない。1993年のJリーグ発足から参戦する"オリジナル10"の中で、一度も2部に降格したことがないのは、国内最多タイトルを誇る鹿島と、そして横浜だけだ。
 
 その歴史を、伝統を、自分たちが途切れさせるわけにはいかない。代々の先輩たちから受け継いできたものを、自分たちも次の世代に継承しなければならない。
 
 8月22日の天皇杯・4回戦の仙台戦は、点の取り合いの末、2-3で敗戦。喜田自身、一度は試合を振り出しに戻す豪快なミドルを突き刺したが、チームを勝利に導けなかった。小さくないダメージが残る身体にエネルギーを与えてくれるのが、サポーターの存在だ。
 
「サポーターの目は死んでいなかった。やっている自分たちが下を向くわけには絶対にいかない。自分たちを信じてくれる人たちの想いを無駄にしてはいけない」
 
 現状は公式戦3連敗中で、リーグでの順位は15位(1試合未消化)。今節の結果によっては、降格圏内に沈むかもしれない。
 
 残り試合数を考えれば、悠長に構えてはいられない。ただ、喜田は冷静に現状を受け止めている。
 
「(先述の仙台戦は)作りの部分では、いつもより真ん中のコンビネーションだったり、中央突破は増えた印象があった。リスク管理でも、すぐにボールを奪い返す場面も、自分たちが大事にしている"ボールを運ぶ"ところの手応えもあった。
 
 負けたけど、そこの"本質"は見ないといけないと思う。負けたなかにも、そういう要素はある。どんどん負けが込むと見失いがちになるけど、何ができて、何ができなかったのかを冷静に振り返る必要はあるし、結果に対する貪欲さも忘れてはいけない」
 
 次節の相手は、欧州屈指のメガクラブ、バルセロナで研鑽を積み、世界的な名声を博したイニエスタ擁する上位の神戸。敵地での対戦で厳しいゲームが予想されるが、今後の反転攻勢に弾みをつけるような勝利を手にしたい。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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