【松本】“絶対的な存在”とのポジション争いを、岩上祐三は「楽しいし、感謝している」

2018年08月24日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

大宮から完全移籍も「葛藤はあった」

主戦場となる右サイドで、岩上は攻守両面で絶大な存在感を発揮。深い位置を取りながらも、好機と見ればダイナミックに前に出て、決定的な仕事に絡む。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 気遣いができる男だな、と思った。
 
 J2で首位(29節終了時点)を走る松本のキーマン、岩上祐三をインタビュー取材した。話を訊く前に、ユニホーム着用の撮影を実施。ボールを持ったカットをお願いする際、何気ない所作に人柄がにじみ出る。無造作にボールを手渡すと、岩上はカメラのほうを向きながら、ボールをクルっと回す。アディダスのロゴマークがきれいに見えるように。
 
「風が強い? じゃあ、撮影は止めにしましょう!」
 
 スパイクの紐を結びながら、岩上はそんな軽口を叩きつつも、撮影ではこちらがリクエストするポーズをすべてこなしてくれた。
 
 今季、3シーズンぶりに古巣・松本に戻ってきた。大宮からの完全移籍。「葛藤はあった」が、湘南時代にも以前の在籍時代にも指導を受けた反町康治監督の存在が、移籍を決断した理由のひとつだった。
 
 開幕からの3試合はベンチを温めたが、4節・岡山戦でスタメン出場すると、以後は右ウイングバックのレギュラーとして、自慢のスタミナと正確なキックを武器にチームを攻守両面で支えつづけている。
 
 右ウイングバックのポジションを争うのは、チームの絶対的存在である田中隼磨だ。クラブ史上初のJ1昇格を果たした2014年時は、岩上がシャドー、田中がウイングバックを担い、同サイドの両者は好連係を見せていたが、今季はライバル関係に――。
 
 当時から田中をリスペクトする岩上は、このシチュエーションをどう受け止めているのか。「楽しいし、感謝しています」と岩上はその胸の内を明かす。
 
「ライバルがハユさん(田中)じゃなかったら、多少緩いプレーをしても、まあ大丈夫でしょ、となるような気がするんですよ。でも、ライバルはハユさんだから、ちょっとでも気を抜けば、すぐに取って変わられる。そういう危機感は常にあるし、緊張感を持ちながら日々サッカーに打ち込めている。だから、感謝なんです」
 

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