フィリップ・トルシエ氏からのメッセージ! “兼任監督”のメリットとデメリットとは?

2018年08月24日 木ノ原句望

森保監督の実績は十分。ただ大きな懸念もある

かつて兼任監督として日本代表を率いたトルシエ氏。“森保ジャパン”をどう見ているのか。(C)Getty Images

 2000年のシドニー五輪と02年の日韓ワールドカップを指揮するなど、かつて"兼任監督"を任されたフィリップ・トルシエ氏は、同様の大役を担った森保一監督の現状をどう見ているのか。今年8月からベトナムのテクニカルディレクターに就任したトルシエ氏にその印象や自身の経験談を語ってもらった。

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 監督としてチームを作り、成果をあげるためには、選手から信頼を掴む必要がある。森保(一)さんはサンフレッチェ広島をJリーグで3度、優勝に導いた実績があり、先日のワールドカップには西野(朗)監督のアシスタントコーチとして帯同していた。
 
 日本人の中でも優れた指導者として一目置かれ、海外でプレーする選手たちからも尊敬を得るには十分なキャリアを歩んできた。懸念があるとすれば、海外での指導経験がなく、日本従来の課題と戦うことができるかという点だ。
 
 相手を尊重する精神に長けた日本人は組織力が高く、それが大きな利点になっている。ただサッカーには組織力と個の力が必要で、その比率は6対4が望ましい。だが日本の場合は8対2で組織力に偏っている。「個」の比率を2から4に引き上げることがチームのレベルアップにつながるが、それには相当な努力が必要で、従来の価値観や手法を崩す必要がある。というのも、日本の文化風習的な背景が、選手の成長を妨げる一因になっているからだ。
 
 一般に日本人選手はリスクを負わないプレーをしがちだが、サッカーでは危険を冒すことも不可欠だ。選手を伸ばすためには、そこを指摘して改善しなければならないが、日本育ちで海外経験のない者がその点に気付くのはなかなか難しい。
 
 しかも、今回のチームは日本人である森保代表監督の下、コーチングスタッフも日本人の編成だろう。問題点を指摘し、組織重視の概念を変えるために、森保さんが勇気を持って対峙できるか、だ。
 

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