数字を残さなければ生き残れないリーグ――アルビレックス新潟Sが無敗Vでも全力挑戦の理由

2018年08月22日 平野貴也

優勝しても、彼らはなぜモチベーションが落ちないのか?

シンガポールの地で技を磨く流通経済大出身の森永(右)。タフさと貪欲さは日増しに向上している。写真:平野貴也

 シンガポールを経由して、新たな道へ。日本の高校、大学でプロを目指してプレーしてきた選手たちが、海の向こうで新たな可能性を探っている。

 8月18日、2018シンガポール・プレミアリーグの21節が行なわれ、日本人選手主体のメンバー構成で臨んでいるアルビレックス新潟シンガポールは、4-0でゲイラン・インターナショナルFCを下して開幕からの無敗試合数を21に伸ばした。
 
 立派な成績に見えるが、選手に満たされた様子はない。勝ったか、負けたか。彼らの戦いは、それだけではないのだ。
 
 前半はバランスを崩さずに押し込み、セットプレーの二次攻撃から長身DF熊谷駿(仙台育英高出身→甲府)がヘディングシュートを決めて先制。下位のゲイランは守備的で、安全にリードを保つ戦いとしては悪くなかった。
 
 今季は開幕から17連勝。初めて引き分けた18節で、すでに3年連続3度目の優勝を決めている。しかし、ゲイラン戦のハーフタイムに吉永一明監督は、選手に問いかけた。
 
「このままの内容で勝ってもいいけど、それだと、君たちは次に行くところがない。チームとして見せられるものは、見せてきた。あとは、個人で何ができるか見せないと(他のクラブに)買ってもらえない。それでも良いか?」
 
 後半に入ると、相手が退場者を出して数的優位に立ったことも影響したが、一気にギアが上がった。アンカーの浅岡大貴(JFAアカデミー福島U-18→筑波大出身)が積極的にミドルシュートを狙い、シャドーストライカーの森永卓(流経大柏高→流通経済大出身)がどん欲にこぼれ球を狙う。

 サイドバックの位置も高くなった。65分、押し込んだ状況からバイタルエリアで横パスを呼び込んだ森永が仕掛けて追加点を奪うと、4分後には左からのクロスに右MFの鎌田啓義(新潟U-18出身)が飛び込んで3点目。さらにオウンゴールも加わって、4-0とした。

 優勝が決まり、勝利が濃厚になってもまだ選手がモチベーションを落とすことなくリーグに臨んでいるのは、個々に自分自身の未来がかかっているからだ。

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