武藤嘉紀はプレミアとニューカッスルの水に馴染むのか? 日本期待の点取り屋の“適性”を探る

2018年08月05日 内藤秀明

ベニテス率いるニューカッスルのスタイルとは?

入団に際して「歴史に名を残したい」と語った武藤。彼はなぜ、ニューカッスルに求められたのか? (C) Getty Images

 現地時間8月2日、日本代表FW武藤嘉紀のニューカッスル正式移籍が決まった。2015年の夏に岡崎慎司がレスターに加入して以来となる日本人のプレミア上陸に、興奮しているサッカーファンも少なくないだろう。

 武藤の移籍金は950万ポンド(約14億円)と英国メディアでは報じられており、ニューカッスルが今夏の移籍市場で補強に費やした中では、最高額となっている。ここからも、いかにこの日本代表ストライカーを、クラブとラファエル・ベニテス監督が求めていたかが窺い知れる。

 では、果たして武藤は、ニューカッスルのどのポジションで起用される可能性が高いのか。結論を先に述べると、4-2-3-1の最前線での起用が濃厚である。

 ベニテス監督のニューカッスルは、カウンター型のサッカーを基本としている。DF4人とMF4人でコンパクトな守備ブロックを形成し、前線に残した2枚(トップ下と1トップ)で相手のパスコースを積極的に消しにかかり、ミスを待つスタイルだ。

 そこで狙い通りに相手のボールを奪取した場合には、スピードと狡猾さが売りのイングランド人FWドワイト・ゲイル、常にベストな位置取りでチームの潤滑油として機能するトップ下のスペイン人MFアジョセ・ペレス、左サイドが主戦場で縦への推進力に定評があるブラジル人ウイングのケネディらが、猛然と前線に走り込む。

 そこに、小柄なアタッカーである右ウイングのマット・リッチーがドリブルで持ち運ぶか、ハードワークと広い視野を併せ持つ武骨なセントラルMFのジョンジョ・シェルビーが決定的なロングフィードを前線に供給するかのどちらかで、素早い速攻を創出してゴールを目指すのである。

 とりわけ、シェルビーの存在感は極めて大きく、彼のサイドチェンジや裏へのロングフィードが起点となってゴールに繋がる場面は、非常に多い。

 しかし、現在のニューカッスルには、シェルビーのロングフィードに抜け出すスピードと、相手DFに身体を当てられても動じず、強引にボールを前に運べるパワーを併せ持つストライカーがいない。

 ゲイルはスピードこそあるが、軽い接触でもファウルをもらいにいく傾向があり、もう一人のスペイン人ストライカーのホセルも、191cmという上背があり、当たり負けしない強さはあるが、カウンターの場面でスピードダウンしてしまうことが少なくない。

 これまでは、その両面を併せ持っていたセルビア代表FWのアレクサンダル・ミトロビッチがいたのだが、余計なファウルでカードをもらう気性の粗さが原因で、ベニテス監督の信頼を失っていた。すでに彼は今夏の移籍市場で、昨シーズンにローンでプレーしていたフルアムへ完全移籍している。

 そこで、武藤なのである。

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