「これからどんどんパスが繋がる」名手ヤットが見据える新生ガンバの“青写真”

2018年07月30日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

「スタートとしてはまずまずだったと思う」

土曜日の鹿島戦でもいぶし銀の輝きを放った遠藤。宮本新政権下でもレギュラーの座は譲らない! 写真:川本学

 ついにガンバ大阪は、貴重な最後のカードを切った。下部組織からの生え抜きで、ガンバイズムの体現者であり続ける宮本恒靖を新指揮官に指名したのだ。史上2度目の降格の危機に瀕するチームを立て直すべく、41歳の智将は、全身全霊を傾けて荒療治に着手した。
 
 ツネ新監督を補佐するのは、クラブOBで気の知れた同年代の山口智コーチ、松代直樹GKコーチといった面々。ともに西野ガンバの黄金期を支えたメンバーだ。そしてもうひとり、新たな戦術とディシプリンを植え付けるために欠かせないキーパーソンが、ピッチ上にいる。38歳ながらレギュラーの座をがっちり掴んでいる鉄人、遠藤保仁だ。
 
 遠藤がガンバにやって来たのは2001年で、今季が18年目になる。これまで早野宏史、竹本一彦、西野朗、ジョゼ・カルロス・セホーン、松波正信、長谷川健太、そしてレヴィー・クルピと7人の監督の下で戦い、7度の政権交代を目の当たりにしてきた。そしてその都度、中盤の絶対軸として新戦術の取り込みを誰よりも早く求められた。
 
 今回も例外ではない。宮本新体制にとっての初陣となった土曜日のJ1リーグ第18節、鹿島アントラーズ戦で、やはりヤットは4-4-2システムと戦術のど真ん中にいた。この日がJ1デビューの高宇洋をボランチのパートナーに従え、タクトを振り続けたのだ。

 
 いつものように淡々と飄々と、1-1のドローに終わった試合を振り返った。
 
「まあ今日は鹿島がね、連戦で疲れてたので助かった部分はあったかなと思います。なによりも、守備の約束事をしっかり守るというか、そこを意識しながらの入りでした。とくに高がトップで出るのは初めてだったんで、僕としては彼のポジションをしっかり見ながらというのも大事で。この形ではまだ1試合しかやってませんけど、けっこうバランスは良くなったんじゃないですかね。後半は間延びする時間があったり微調整しなければいけない部分はあるけど、スタートとしてはまずまずだったと思います」
 
 クルピ前政権では個の能力に依存する傾向が強く、とりわけ守備に関してはプレスのポイントなどディテールが曖昧で、チームとしての連動性は求めるべくもなかった。宮本監督はU-23チームで志向していたのと同様に、選手個々のハードワークを基本軸に据えた。そのうえで連動性ある守備ブロックの構築にまずは手を付け、短い調整時間である程度の"形"にまで持って行ったのだ。
 

次ページもたらされた「守備意識の向上」と「流麗なパスワーク」

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