女王アメリカとの力量差に愕然とした1年前… なでしこ、田中美南が同点弾で示した成長ぶり

2018年07月28日 早草紀子

2-4で敗れたアメリカ戦は厳しい台所事情だったが…

アメリカ戦で一時同点となるゴールを奪った田中。昨年からの成長の後を窺わせる得点だった。写真:早草紀子

 アメリカで現地7月26日から開催されている「トーナメント・オブ・ネーョンズ」に、今年もなでしこジャパンが参加している。そのアメリカとの初戦、なでしこジャパンは2-4の完敗を喫した。この数字をどう捉えるか。
 
 当初、高倉麻子監督も今大会は8月に控えたアジア競技大会への積み上げと位置付けていた。が、主軸の阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)がケガで長期離脱している状況に加え、キャプテンで守備の要でもある熊谷紗季(オリンピック・リヨン)、欧米とのフィジカル勝負にめっぽう強い宇津木瑠美(シアトル・レイン)、若手成長株の市瀬菜々(ベガルタ仙台)、ドイツへ移籍したばかりの猶本光(SCフライブルク)らが不参加。厳しい台所事情で現地入りし、たった2日で世界ランク1位のアメリカとの初戦に臨まねばならなかった。
 
 4失点――確かに看過できない多さではある。ただ、右サイドバックに入った清水梨紗(日テレ・ベレーザ)は最近ようやくなでしこジャパンに定着したばかり。左サイドバックの阪口萌乃(アルビレックス新潟レディース)は、この試合でキャップ数がようやく「2」となり、サイドバック歴は試合前日の公式の45分間練習を合わせてわずか二日だ。センターバックに入った鮫島彩(INAC神戸レオネッサ)も本業ではなく、三浦成美、有吉佐織(ともに日テレ・ベレーザ)のダブルボランチも初の試みとくれば、対応しきれない場面が出ても致し方ないだろう。
 
 相手は日本の宿敵とも言えるアレックス・モーガンや、メーガン・ラピノー、カーリ・ロイドとビッグネームが健在、百戦錬磨の女王である。付け焼刃が通用するはずもない。ただ、劣勢の中でも経験値は積める。
 
 その良き例が日本の1点目を挙げた田中美南(日テレ・ベレーザ)だ。昨年の同大会では初めてアメリカというチームに触れ、その力量差に愕然とした。ボールを受けても身体をぶつけられると瞬く間に軸がブレた。放ったシュートはことごとく弾き出され、相手を背負えばトラップは乱れた。それから1年、体幹、スタミナ、相手との駆け引き、ポジショニングに至るまでできることは何でもやった。
 

次ページ同点弾のシーン。冷静な判断と最短時間で放つタイミングはこの1年、取り組んできたこと

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