王者川崎のテクニシャンが絶賛する実力者も! 長崎が持つ意外な「質の高さ」とその背景にあるマーケット

2018年07月27日 竹中玲央奈

中断期間で取り組んだ攻撃の形で、王者川崎を追い詰める

17節終了時で15位の長崎。残留圏スレスレのラインに位置するが、選手の質は決して低くない。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 昨年のJ1王者である川崎と今年初めてJ1の舞台を戦う長崎の初対戦は、王者・川崎の辛勝という結果に終わった。1−0というスコアを見てもそうだが、内容的にも川崎が圧倒できたとは言い難い。ただ、それでもしっかりと勝点3を奪うのは、川崎の王者たる所以とも捉えられるだろう。
 
 一方で敗戦を喫したものの、長崎の出来を評価したい。初昇格のチームにありがちな、"防戦一方で勝機が見えない"というゲームでは決してなかった。前半こそ個のタレント力に長けた川崎の攻撃に苦戦する時間帯が続いたものの、後半は終盤にかけて敵陣に押し込み、厚みのある攻撃でゴールを脅かすシーンが増えた。飯尾竜太朗のクロスにファーで待ち構えた翁長聖が左足で見事に合わせるもわずかに枠外に逸れ、鈴木武蔵のヒールパスに背後から抜け出した澤田崇のシュートはチョン・ソンリョンに抑えられた。
 
「我々がボールを持ってフロンターレさんの守備の時間が長いという展開には間違いなくならないので、ある程度の想定の中で、前線からプレッシャーを掛けながら、最終的にはGKも含めて10vs11で守れて、狙いとしてはある程度やれていたかなと思います」
 
 高木監督は守備面でこう評価した後に「ただ、点を取れないと」と嘆いたが、前述したようなシーン以外にもゴール前で川崎が守備ブロックを組んでいる中で間を縫うパスを重ねてゴール前に迫るテクニカルな場面も少なくなかった。「中断期間中に取り組んだボールを持つ、崩すというところも、少しは出来た」と翁長は手応えを感じたようだった。
 
 主観的ではあるが、堅い守備と90分走りきれる走力、そしてサイドからの攻撃に活路を見出すような、いわゆる"堅守速攻"のイメージが強いチームが見せた積極的な仕掛けやリスクを冒した攻撃の形には、少し驚かされたというのが本音である。とはいえ、よくよくこの長崎のメンバーを見てみれば、そうしたアタッキングサッカーを実現できるのも決して不思議ではないように思えるのだ。
 

次ページかつて“技術”で鳴らした選手たちの存在

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事