【小宮良之の日本サッカー兵法書】「チーム大改造」の甘い罠…やけっぱちの大博打に手を出すな!

2018年07月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

弱体化する大きなリスクも…

緊急事態で就任したこの大会限定の監督、急ごしらえのチームではあったが、全てを解体してしまうのはあまりに危険だろう。 写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 日本代表はこれから新監督が就任するとともに、選手の入れ替えが行なわれるという。西野朗監督の就任は緊急的だったし、平均年齢の高さを考えれば、今こそ若手を登用するタイミングで、変革の時ではあるのだろう。
 
 しかし、あくまでベースは引き継ぐべきだ。
 
「チーム大改造」
 
 そういう見出しを目にすると、派手な宣伝文句のようで耳障りは良いのだろうが、不穏さしか感じない。代表チームも、クラブチームも、それは同じことだ。
 
 新監督を招聘し、大量に選手と契約し、同じだけの選手をクビにする。こういう大改造は、それまで結果を出ていない場合がほとんどなので、変化自体が好意的に受け入れられる。むしろ、「改造なくして未来なし」のような気配さえある。
 
 功労者であるベテランを切って、売り出し中の若手を入れると、顔ぶれに新鮮味を覚えるし、「クラブとしての将来」を感じられるかも知れない。
 
 しかし、チームの大改造は一か八かの賭けであり、逆に弱体化する大きなリスクも背負っていることを忘れてはならない。
 
 そもそも世界では、我慢しても継続するチームが結果を残している。
 
 例えば、昨シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)でベスト8に入ったチームのうち、レアル・マドリー、リバプール、バイエルン、マンチェスター・シティ、バルセロナなどは、その前のシーズンと主力がほとんど変わっていない。11人中、代わったのは2人程度といったところだろうか。
 
「継続こそ力なり」
 
 それは明白だ。
 
 もちろん、強さを継続する上位クラブに対し、弱小クラブはテコ入れを図る必要がある、というのはひとつの道理だろう。
 
 しかし、チームの編成を半分も変えてしまうようなクラブは、チーム力の低下を避けられない。いくら、チームとしての土台を作り直すといっても、それを更地にするのは時間がかかるものである。一方、どこかが歪んでいたとしても、補習強化することで全体のバランスは格段に良くなる。
 
「選手を入れ替えたら良くなる」
 
 それは虫が良すぎる願望だろう。

次ページ繰り返せばチーム力は落ち、墓穴を掘る

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