【識者に問う】日本代表は4年後のW杯に向けて、さらにパスサッカーを磨くべきか?

2018年07月13日 後藤健生

「パスサッカー」と「球際の強さ」は決して相反するものではない。両立させてこそ、世界と戦える

ロシアW杯でベスト16に進めたのは、パスサッカーが機能したから。柴崎のロングフィードも効いていた。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 西野朗監督に率いられた日本代表は、ロシア・ワールドカップでグループリーグを突破。さらに決勝トーナメント1回戦でも強豪ベルギーと激しく、それでいてフェアな戦いを繰り広げ、大きなインパクトを残した。
 
 2点をリードしながら勝ち切れなかったのは非常に残念だが、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の解任から本大会までの準備期間の短さを思えば、大成功だったと言っていい。
 
 成功を呼び込んだ要因のひとつに、パスサッカーが機能したことが挙げられる。
 
 コロンビア戦では開始早々にPKで先制し、しかも数的優位に立つという幸運があったが、その幸運を勝点3に結び付けられたのは、しっかりとパスを回して相手の体力を奪う戦い方ができたからだ。また第2戦でも、ポゼッションの時間を長くすることでゲームをコントロールし、セネガルの最大の武器であるスピードを封じ込めている。
 
 日本が試合展開に合わせて自在に戦い方を変えられたのは、ボールを保持できるという確固たるベースがあったからこそだ。しかも、柴崎岳というパスの名手が覚醒したことで、ただ中盤でボールを回すだけでなく、長いパスで一気に敵陣を崩すやり方も織り交ぜることができた。
 
 セネガル戦の1点目につながった長友佑都へのロングパスや、ベルギー戦の原口元気への絶妙なスルーパスは、まさしく世界水準だった。
 
 もちろん、どんなサッカーを志向するにしても、「個の力」の強化は絶対に不可欠だ。1対1のコンタクトプレーで負けていたのではパスも回せないし、ゴール前で厳しいマークを受けながら正確で強いシュートを打つこともできない。
 
 それは守備の局面も同じ。今大会で強豪国相手に好勝負を演じられたのは、CBの吉田麻也と昌子源が空中戦で引けを取らなかったからだ。
 
「パスだけ」でも勝てないし、「デュエルだけ」でも勝てない。スピード、高さ、パワーなどすべての面で強化が必要なのは明らかだ。「パスサッカー」と「球際の強さ」は決して相反するものではない。両立させてこそ、世界と戦えるのだ。
 
 それでも、日本サッカーが武器とすべきはやはりパスサッカーだ。
 
 どれだけフィジカルを強化し、対人プレーを鍛えたとしても、あるいは高さやスピードのある選手を発掘できたとしても、それを武器にヨーロッパやアフリカの国々に勝てるとは思えない。
 

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