佐藤寿人がロシアW杯を解説!強豪国の苦戦、新星の出現、VAR… 現役選手の視点で語り尽くす!!

2018年07月12日 サッカーダイジェスト編集部

ポイント1――強豪国の苦戦

グループリーグではモロッコなどが奮闘。実力の差がスコアに現われにくくなった。(C)Getty Images

 個人的なことを言うと、僕は大のイタリア好きなので、イタリアが出場していない今大会は例年より楽しみが少ないんです(笑)。まあそれは冗談として、やっぱりワールドカップはテレビで観ていても熱気がありますし、選手として勉強になりますね。
 
 今大会でまず感じたのは、各国の力の差がスコアに現われにくくなっているということ。例えばグループリーグではモロッコやイラン、コスタリカらの奮闘が光りました。ブラジル、スペイン、ポルトガルらと良い勝負をしましたからね。
 
 特にモロッコは攻守のバランスが取れた好チームで、新たな発見でした。得点源となる選手がいたわけではないのに、粘り強い守備と前への推進力を活かして善戦しました。
 
 これらの健闘した国に共通して言えたのは団結力があって、ただ守っているだけではなかったということ。それはベスト16に進出した日本の戦いにも通じるものがありました。スーパースターひとりを抱えるよりも11人が連係して、ひとつの組織として戦う。今大会は個より組織が目立つ傾向にありますね。
 
 2010年の南アフリカ大会でスペインが優勝し、一時はポゼッションサッカーがトレンドになりました。ボールを支配すれば、勝利の確率も高まるという考え方です。ただ昨今は相手にボールを持たせて、カウンターで結果を出すチームが増えてきている。今大会を境にその流れはさらに強まるかもしれません。
 
 また驚かされたのは世界王者ドイツのグループリーグ敗退です。勝負強さが自慢のチームだっただけに予想外でした。クラブと代表チームを単純比較できないですが、僕も広島でJリーグ王者になり、チャンピオンの苦労は少しは分かっているつもりです。だからドイツにも人知れない苦しみがあったんだと思います。
 
 頂点に立った後で、頭を悩ませるのは良好なサイクルを再び作る作業です。有能なタレントが揃っていたからこそ優勝できたわけで、どんなタイミングで新しい血を取り込むのか、判断は難しい。その点、ドイツはドラクスラーやキミッヒら下の世代と上手く融合していたはずなんですが……。
 
 2006年のドイツ大会で優勝したイタリアも4年後にはグループリーグで敗退しましたし、2010年の南アフリカ大会を制したスペインも同様の憂き目に遭いました。チーム、そして選手のピークを維持するのは難しいということです。クリスチアーノ・ロナウドみたいにずっとピークを迎えているような選手は特例中の特例なので。
 
 ちなみにここまでの試合で最も印象に残っているのはグループリーグ最終戦で行なわれたドイツと韓国の一戦です。ドイツは勝って決勝トーナメントへ、2連敗していた韓国は大会初勝利を目指していました。23時のキックオフで、次の日も練習があったので、前半だけ、もしくはドイツが先制したら寝ようと思っていたんです。でも前半が終わって0-0。「あれ? これはまさかな……」と、思っていたら、案の定、韓国が試合終盤に意地を見せてドイツを破った。
 
 逆にドイツは焦りから本来のプレーができなかった。終盤にはCBのフンメルスがオーバーラップしてクロスから決定機を迎えましたが、頭で上手く捉えられずに肩に当ててしまった。自分がフリーだと分かった瞬間に決められると思い、意識がゴールに向かいすぎて、ボールを最後まで見られなかったのでしょう。やっぱり普通の精神状態ではなかったはず。サッカーの怖さが凝縮されたゲームでしたね。
 

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