6年前まで5部リーグにいたGKは、いかにしてイングランドのW杯4強入りの立役者となったのか【ロシアW杯】

2018年07月09日 サッカーダイジェスト編集部

バンクスやシルトンといった名手の系譜を継ぐ若き守護神

キャリア初の夢舞台ながら、物怖じすることなく堂々たるプレーを披露しているピックフォード。当然、各国メディアも高い評価をしている。 (C) Getty Images

「全ては、日頃のハードワークの賜物だね」

 祖国イングランドをワールドカップで28年ぶりにベスト4入りさせた24歳の若きGKジョーダン・ピックフォードは、難敵スウェーデンとの激闘の後、そう誇らしげに語った。

 頼りがいのある守護神のプレーで、とりわけ光ったのは、チームが1点をリードした後、追い上げるスウェーデンが攻勢に転じた後半の3つのスーパーセーブだ。

 47分にマルクス・ベリのシュートを横っ飛びでストップし、62分と71分にも素早い反応で相手の決定機を阻止。その神懸ったセービングでチームを救ったことが評価され、FIFA(国際サッカー連盟)からもマン・オブ・ザ・マッチに選出された。

 イングランドの長いサッカー史を語る上で、名うてのGKたちの存在は、欠かすことができないものである。

 母国開催の1966年大会を制した伝説の守護神ゴードン・バンクス、70年代から90年代にかけて活躍し、同代表の歴代最多125キャップを刻んだピーター・シルトン、「ポニーテール」の愛称で親しまれ、20年以上も第一線で活躍し続けたデイビッド・シーマン……他にも、レイ・クレメンスやデイビッド・ジェームズら多くの名手が、歴史を彩ってきた。

 しかし、ここ10年は「守護神欠乏症」と言っても過言ではないほど、頼れるGKは出現しなかった。2010年南アフリカ大会のアメリカ代表戦で、シュートをトンネルしたロバート・グリーンをはじめ、ここ8年間、ゴールマウスを守ってきたジョー・ハートでさえ波があり、お世辞にもワールドクラスとは呼べなかった。

 デイビッド・ベッカム、スティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、リオ・ファーディナンド、ウェイン・ルーニーら、攻守に指折りの好タレントを抱えながら、彼らが世界の舞台で勝てなかった主因として、安定した守護神の不在は常にメディアに取り上げられてきた。

 それだけに、ゴールマウスの前で大活躍を見せるピックフォードは、名守護神の系譜を再開させるとともに、世界から「イングランドのGKは笑いの種だ」と揶揄されてきた近年の負の歴史を終わらせる存在として、高く評価されている。

 そんなピックフォードだが、全くの苦労なしで代表正GKの座を射止めたわけではない。今や国民の期待を一身に背負う彼は、わずか6年前まではノンリーグ、いわゆるセミプロとアマチュアが混在するリーグに属していたのだ。

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