【小宮良之の日本サッカー兵法書】西野ジャパンも一時は手にした“全てを可能にする”必殺の武器

2018年07月08日 小宮良之

C・ロナウドが大舞台で活躍できる理由

ベルギー相手に2点をリードできると、誰が予想しただろうか。もっとも、これを守らなければならないという状況になると、日本は脆さをさらけ出してしまった。 写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 いよいよ佳境に入ったロシア・ワールドカップだが、今大会のグループリーグでは、終盤で試合が決まる展開が続いた。
 
 ブラジルはアディショナルタイムに入ってからの2得点でコスタリカを下し、ドイツもアディショナルタイム5分経過後にスウェーデンを破るゴールを決め、アルゼンチンは残り5分を切ったところでナイジェリアを逆転、そしてスペインは終了間際にモロッコに追いついた。
 
 W杯優勝経験があって「列強」と呼ばれる国々が、地力の強さを見せた。その一方で、韓国が終盤で前回王者ドイツを奈落の底に突き落とすという一戦もあった。
 
「どちらに転ぶか分からない」
 
 それがサッカーというスポーツの真実だが、このレベルでも、その本質は変わらないのだろう。
 
「サッカーは心理戦だ」
 
 そういわれて久しい。
 
 サッカーにおいて、技術、体力、戦術、どれも大事だが、それを運用するのは、結局のところ、メンタルの部分である。メンタルが土台になって、技術、体力、戦術を用いる。言い換えれば、メンタル的な劣勢においては、いかなる技術も、強靭な肉体も、明晰な戦術も、意味を成さない。
 
 しかしながら、サッカーにおいて、心を鍛える、というのはなかなか難しい。明確なメソッドがあるわけではないからだろう。スポーツ・メンタルトレーナーは存在するが、一人ひとりを適切にケアできるわけではない。そもそもメンタルの強さは、己の裁量次第というところがあるのだ。
 
「俺は、俺のことが好きだ。自分の価値を認めている」
 
 そう断言できるクリスチアーノ・ロナウドには、不動の自信がある。そのおかげで、切り立った状況でも、本来の(あるいはそれ以上の)力を発揮できるのだろう。そして、舞台が大きくなればなるほど、彼は活躍する。
 
 しかし、そんなC・ロナウドを擁したポルトガルも、決勝トーナメント1回戦で姿を消した(ウルグアイに1-2で敗北)。
 
 W杯では、彼のような選手が多く揃った集団だけが、最後は勝ち上がれるのだ。

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