早急な監督選びには違和感。日本サッカー協会は、まずこの4年の紆余曲折を総括すべきだ

2018年07月07日 加部 究

誰よりも日本の潜在能力を信じた西野監督。しかし、監督着任の整合性にはいまだ疑問も残る

ロシアからの帰国会見で、田嶋会長は西野監督の7月末をもっての退任を発表。後任については未定としているが…。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップで、日本代表は2大会ぶり3度目のベスト16入りを果たし、8強とはならなかったものの、FIFAランク3位の強豪・ベルギーを相手に、各国からの称賛を集める戦いぶりも見せた。しかし、日本代表のこの4年の歩みを見れば、決して順風満帆な足取りで今日の成果を掴んだわけではない。ベスト16という成果の一方では、直前での監督交代を含め、様々な問題点が浮かび上がる。果たして、いま日本サッカーに求められる視座とは?
文●加部 究(スポーツライター)
 
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 ベルギー戦を終えたピッチ上の西野朗監督が、初めて心中に宿る強烈な悔恨と覚悟を見せた。
 
「激変させようと思っていた…」
 
 実際に誰より日本の潜在能力を信じていたのは、西野監督だったに違いない。4年前のブラジル・ワールドカップの惨敗を経て、おそらく多くの関係者が、日本の長所を見失いかけていた。ロシア大会開幕前に本誌が行なった識者のアンケートを見ても、大半がグループステージで強国に挑む方法として、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の提示してきた堅守速攻の路線を選択している。
 
 しかし西野監督は、就任会見で語った。
「日本人のDNAでやれることもある。監督(ハリルホジッチ氏)は世界基準を強く要求してきたが、やらなければならないことと、やりたいプレーのギャップを合わせていく必要がある。本来日本の選手たちが持っているパフォーマンスを表現させてあげれば、十分にプラスアルファを望めるし、グループステージの突破につながると思う」
 
 冒頭の「激変」発言も含めて、ハリルホジッチ体制を支える立場の西野技術委員長こそが、それまでの日本代表の戦い方に最もストレスを感じていたことは容易に想像がつく。わずか46日間の激変を信じた人だ。真逆の道を歩む指揮官を看過できるはずがなかった。
 
 西野監督の46日間の仕事ぶりは見事というしかない。もちろん結果オーライの要素は否めないが、引き寄せたツキも含めて軌道修正の末に得た収穫は測り知れない。

 ただし水際立った監督としての修復作業に対し、技術委員長としての仕事ぶりはどうだったのだろうか。または日本代表強化の流れの中で、西野技術委員長の着任に整合性があったのか。新しいスタートを切るなら、まずそこを入念に検証しておく必要がある。

次ページ「46日間」でも好結果を生んだ西野ジャパンだが、「46日間」で十分だったのか?

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