「凄まじい進歩だ!」「品格ある去り方」 ベルギー戦惜敗の西野ジャパンを仏メディアが手放し称賛【ロシアW杯】

2018年07月03日 結城麻里

カフェで会う誰もが笑顔で…。

一時は勝利を手中に収めた日本。強豪ベルギーとの一戦で見せた躍動感には、目の肥えたフランス人たちも驚嘆の声を上げた。(C) Getty Images

 ロストフでの激闘からら一夜明けた7月3日、早朝からショートメッセージの着信音が鳴った。寝ぼけた目をこすりながら見ると、15年も疎遠になっていたフランス人の旧友からだった。彼は、フランス人プロフットボーラーの父親である。そこにはこう記してあった。

「日本人のなんたる試合だ! そして、2002年から比べると、凄まじい進歩だ! 私は感動している」

 そして、朝のカフェでも、すれ違う誰もが笑顔だった。

「最初観られなくて、やっとテレビをつけたら日本が2-0でリードしていて、信じられなかったよ! 惜しかったなあ!」
「俺、日本に賭けていたんだぜ! もうちょっと冷静だったら不可能じゃなかったのに、惜しかった!」
「でもあのクルトワに2ゴール見舞ったんだからな。素晴らしかったよ!」

 3日付の仏紙『L'Équipe』の一面には、ネイマールとベルギー選手たちの写真の上に「悪魔化」の大見出しが躍った。ブラジル対メキシコ戦で"過剰演技"をしたネイマールと、赤い悪魔ことベルギー代表の快勝劇をその表現で重ねたのだ。そして二面記事では「ベルギー人がイッポン勝ち」と銘打った。

 その記事内では、戦況をベンチで見守ったベルギー代表MF、トルガン・アザールのコメントを紹介している。「僕らはどん底だったよ。日本はいずれペースが下がるだろうと見ていたのに、逆に僕ら(の首)を探しにきた。でも僕らもその罠からうまく抜け出せたんだ」と振り返った。

 
 一方、日本に向けられた記事では、「今回はプレーした日本」の見出しで、「日本人の失望の大きさは、試合で見せた闘いぶりはふさわしいものだった。それは強烈な試合のシナリオ、そして日本が提供したパフォーマンスの大きさからも言える」と称賛された。

 また、同紙は、「複数の小国代表が強豪相手にプレーを拒否しようとし、それで成功もしてきたのをあまりにも見てきたから、アキラ・ニシノ率いる選手たちの精神には敬意を表しないわけにはいかない」と強調した。

 さらにフェアプレーポイントを計算してのパス回しが非難を浴びたグループリーグ最終節のポーランド戦を踏まえ、「あの試合で恥をかいたこと思うと、皮肉に映るかもしれない」としながらも、「スタートから攻め、ハイプレッシングを敢行してしばしば効果をあげ、日本人は一貫して前にいくプレーを優先、敵を行動不能で破壊しようとした」と、ベルギー戦の振る舞いに賛辞を贈った。

 別の分析記事では、「マルセイエ(マルセイユ人)のサカイが言葉を詰まらせてから、フランス語ではなく英語で返答した」と試合終了直後のシーンを描写し、「目にはほとんど涙が溜まり、多くを語れなかった」とも綴った。

 酒井宏樹は今大会で最も活躍したマルセイユ所属の選手だ。その健闘ぶりは、指揮官のリュディ・ガルシアが、グループリーグの最中に、「サカイの活躍は私の大きな誇りだ」と語っていたほどだ。きっとマルセイユ中が、熱い眼差しと涙で、彼の敗退を見送ったに違いない。
 

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