「ハメス、立たないでくれ!」コロンビアの10番がスタンドで大興奮

2018年07月04日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

「今日はちょっとついてないな」と思っていたら。

ミナの同点ゴールに歓喜の雄叫びを上げるハメス。

【ロシアW杯・決勝トーナメント1回戦】コロンビア 1-1(PK3-4) イングランド/7月3日/スパルタク(モスクワ)
 
 またひとり、主役候補のスター選手が大会を去った。
 
 ロシアW杯に限らずスタジアムの記者席は「机のあり」と「机なし」に分かれていて、この日の僕は後者。イングランドのメディア数は日本と並んで大会屈指なのに、舞台がやや手狭なスパルタクでは仕方がない。メディアチケットに記載されている自分のシートに向かった。
 
 メインスタンドのやや左側、前から4列目だった。ピッチが近すぎて全体が見えにくいし、机がないのでパソコンは開きにくいしで、取材するうえで最高の場所とは言えない。いつも使っていたメトロがなぜか運休で、急遽タクシーに飛び乗るも道が大渋滞で倍以上の時間がかかってようやくスタジアムに辿り着いていただけに、「今日はちょっとついてないな」と思いながら、目の前のコロンビアのウォーミングアップを見ていた。
 
 右ふくらはぎを怪我して別メニュー調整が続いていたハメス・ロドリゲスは、控え組の和の中にもいなかった。「ベンチ外か、そこまで悪いのか」とコロンビアのエースを見られないことに、さらにちょっと残念に気分になった。
 
 しかし、試合が始まると周囲がザワザワし始めた。視線を上げると、ハメスがピッチ脇をこっちに向かって歩いてくる。そして、そのままスタンドに入ると、僕の3列前のシートに座った。同じく怪我でベンチ外になったFWミゲル・ボルハ、コーチのエステバン・カンビアッソともう一人のスタッフとともに、そこで試合を観戦していた。
 
 最初は「んっ、ハメスここで観るんだ。相変わらずイケメンだな~、そりゃあ女子から人気なわけだ」と思うくらいであまり気にしていなかったが、だんだん無視できなくなってきた。何しろオーバーリアクションだったのだ。仲間が敵にファウルされれば身を乗り出して抗議し、ミスをすれば手を叩いて励まし、チャンスとあればまた立ち上がって「いけー!」と叫ぶ。隣のスタッフに「座りなさい」と制止されていたほどである。その真後ろにいた僕は「ハメス、立たないでくれ! ピッチが見えない!」と何度も思った。
 
 57分にイングランドに先制されて以降はさらにヒートアップし、着ていたジャージを脱いで半袖に。この日のモスクワは風が冷たくて肌寒く、薄いダウンを着ている人もいたくらいだったが、ハメスはまったくお構いないだった。

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