「世界的な批判を振り払うために…」英誌・熟練記者も日本の“時間稼ぎ”を憂う

2018年06月29日 マイケル・プラストウ

36年前のあの光景を想起させた

ポーランド戦の後半、刻一刻と変わる状況下で日本の選手たちは、ベンチ連動して結果を掴み取った。だが最後のそれは、万人に受け入れられる振る舞いではなかったのだ。(C)Getty Images

 日本代表がベスト16進出を果たした。ロシア・ワールドカップ開幕前の状況から考えれば、きわめて過酷なミッションを達成したと言っていいだろう。
 
 ただ、問題は世界中が目撃したポーランド戦での行動だ。同点ゴール、逆転ゴールを追い求めず、0-1とリードされているにもかかわらず、最終ラインでボールを回して時間を稼いだあの振る舞いである。あれはなかなか世界では受け入れられないし、「おめでとう」とは言ってもらえない。どう正当化しようとも、昨日のポーランド戦は長きに渡って語り継がれてしまうだろう。日本代表がこれまでコツコツと築いてきたクリーンなイメージが、音を立てて崩れ去ったのだ。個人的にもとても残念なシーンだった。
 
 フットボールは矛盾だらけのスポーツだ。誰もが声高にフェアプレーの重要性を叫ぶが、ルール違反は日常的に繰り返されている。今回の日本の行動はもちろん、ルール違反ではない。だがそれでも、途轍もなく後味が悪くはないか。プロスポーツの世界は結果がすべてで、負けが許されない厳しい世界だ。一方で、人間の普遍的な道徳や理想を踏み外すと、とりわけワールドカップのような世界的な舞台では、巨大な反感を買ってしまう。なぜなら、普段はフットボールに興じないファンが観ているからだ。彼らにその正当性や裏事情を説明したところで、理解を得られるものではない。いま現在、日本全体を包んでいるちょっとした嫌悪感は、そこに起因しているのだ。

 
 順位決定のためにFIFA(国際サッカー連盟)が採用した新ルール「フェアプレーポイント」が、皮肉な結果をもたらしたのである。スポーツマンシップをゲームスマンシップ(シニカルな駆け引き)に変えた。ワールドカップが汚されたと感じるひとは多いだろう。
 
 1982年のスペイン大会でも似たような出来事があった。1次リーグ最終戦の西ドイツ対オーストリア戦は前者が勝利したが、2次リーグ進出のために双方が談合していたと疑惑の目を向けられたのだ。いわゆる「ヒホンの不名誉」で、スポーツ史に残る事件。今回の日本vsポーランド戦は私に、36年前のあの光景を想起させた。
 

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