【釜本邦茂】メキシコ五輪3位の時はスペインと20分も“にらめっこ”。時間稼ぎは魅力的ではないが…

2018年06月29日 日本代表

私も体験した“時間稼ぎ”の試合。こういうことが起こり得るのがサッカー

終盤は長谷部を投入して、全体にこのまま“終わらせる”指示を浸透させた。「サッカーでは起こり得ること」と釜本氏。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

 日本代表がロシア・ワールドカップで2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。正直、大会前はネガティブな雰囲気が色濃く漂っていたなかで、選手たちもいろいろプレッシャーはあっただろうし、本当によくやったと思う。素直におめでとう、と言いたいよ。
 
 もちろん、3戦目のポーランド戦に関しては、決して良い試合をしたわけじゃない。とりわけ、終盤は白熱した展開のなかで、引き分けもしくは勝利でグループリーグ突破を決められれば良かったけど、結果的に"時間稼ぎ"という選択をした西野監督やそれに従った選手たちのことは尊重してあげたいね。
 
 やっている選手たちにしてみれば、無理をして攻めに出て行くことでカウンターを食らい、取り返しのつかない失点をすることが最もやってはいけないこと。あの終盤の局面で0-2になっていたら、日本はもう厳しかったかもしれない。逆に敗退が決まっているポーランドのほうは1-0でも、2-0でも同じことだから、最後はお互いに納得して"時間稼ぎ"となったのだろう。
 
 もちろん、これにはいろんな賛否両論の意見があるだろうね。ただし、次のラウンドに進んでいく過程のなかで、ああいうことも起こり得るのがサッカーだよ。私自身も、銅メダルを獲得したメキシコ五輪の時に経験しているからよく分かるんだ。
 
 あの時は同じ予選グループのなかにスペイン、ブラジル、ナイジェリアがいて、最終戦を迎えた段階で首位スペイン(勝点4)、2位日本(同3)、3位ブラジル(同1)、4位ナイジェリア(同0)。2位の日本は、予選突破を決めた首位のスペインと対戦し、同時刻開催のブラジルとナイジェリアの結果を気にしながらの試合になった。
 
 日本対スペインは0対0で進んでいったが、どういうわけかスペインが途中から急に攻めてこなくなったんだ。どうやら、1位突破すると準々決勝で地元のメキシコと対戦しなければならず、これを嫌ったらしい。もちろん、我々もその年の春にメキシコにコテンパンにされていたから、当たりたくはなかったが、負けてしまうと、ブラジルの結果次第では予選リーグ敗退の可能性も出てきてしまう。
 
 しかし、ブラジルがナイジェリアに確か1-3で負けているという情報が入って、会場アナウンスで"ウノ(1)-トレス(3)"と他会場のスコアが発表されたんだ。それで残り時間は20分くらいあったんだけど、ベンチからは今回の日本と同じように「もう攻めるな」という指示が出されて、あとはずっとにらめっこの状態。結局、日本はスペインと0対0で引き分け、予選リーグを2位で通過して地元のメキシコとも当たらずに済んだ。準々決勝はフランスと対戦して3対1で勝って4強入りし、3位決定戦でメキシコと当たって銅メダルへとつながったわけだ。
 

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