柴崎岳に衝撃。「単なる司令塔」から「ユニバーサルなMF」への脱皮

2018年06月25日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

その姿はまさにレジスタ(司令塔)のそれだった。

柴崎はセネガル戦で日本の攻撃をコントロールした。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

[ロシアW杯・グループH]日本2-2セネガル/6月24日/エカテリングルク
 
 衝撃と言って差し支えないほどインパクトを受けたのが、セネガル戦の柴崎岳だ。爆発的なスピードを持つ相手ウイングを封じた酒井宏樹と長友佑都、前線に起点を作った大迫勇也、ゴールを奪った乾貴士と本田圭佑などもたしかに素晴らしかったが、個人的には日本のMOMに推したいパフォーマンスだった。
 
 まずゲームメーカーとして素晴らしかった。セントラルMFでコンビを組む長谷部誠はややパスミスが多かっただけに、その正確なパスワークはなおさら目を引いた。日本はショートパス主体のスタイルを志向しているが、状況や相手に応じて中長距離のパスを供給した。
 
「基本的にはしっかりと繋ぎながら、連係を取りながらというイメージはしていたんですが、予想以上に相手の裏への配給の対応が悪かった。だからある程度、個人的にロングボールを混ぜていった」
 
 そして34分には、そのロングボールで同点ゴールの起点になる。柴崎が自陣センターサークル内からの正確なフィードで相手DFラインの裏を突き、長友佑都を抜け出させる。最後は乾貴士が右足でゴールを決めた。
 
「相手のサイドバックの対応が良くなかった。佑都さんが良い動き出しをしているのは見えたので、そこを上手く突けたかなというのはある」
 
 試合の流れや状況に応じて自らの判断で長短のパスを調整し、遅攻か速攻かを方向付けて攻撃をコントロール――。その姿はまさにレジスタ(司令塔)のそれだった。
 
 とはいえ、柴崎のこうしたパスセンスやテクニックなどは、ある意味で鹿島アントラーズ時代、もっと言えば青森山田高校時代から定評があった。それを初のW杯でしっかり出している部分はもちろん特筆に値するが、サプライズと言えるほどの驚きはない。コロンビア戦もそうだったが、このセネガル戦で何よりも印象深いのは、ディフェンスに関する部分だ。
 
「今までやった相手の中でも、けっこう特殊な能力というか、アプローチ、距離、間合いのチームだった」と振り返る通り前半こそややボールの取りどころを掴みきれていない印象だったが、「慣れた」という後半は戦術眼を利したセカンドボールの回収や後方からのパスカットを何度も成功させ、そのまま入れ替わる形で前線にも飛び出していった。細身で小柄ゆえ決して得意とは言えない競り合いでも、必死に身体を張ってデュエルした。
 
「タイミングがあれば前線に出て行こうと狙っていた。後半はとくにロングボールが増えたので、セカンドボールの回収、そして流れが良ければそのまま飛び出していこうと思っていた。2、3個は良い場面があったかなと」
 

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