【2014南関東総体】代表校の強さの秘密を探る|埼玉・西武台

2014年06月24日 松尾祐希

目の前のボールを必死に追うことで手に入れた武器。

相手を上回る走力を武器に埼玉を制した西武台。高い守備意識がチーム全体に浸透している。 (C) SOCCER DIGEST

 今年の西武台は、「最後まで走り切る」という言葉がぴったりと当てはまる。
 
「気温40度だろうが50度だろうが、やり方は変えないし、行ける時には行くぞと常に言っています。目の前のボールを必死で追うことは厳しく見ていますよ」
 守屋保監督のこの言葉どおり、西武台はインターハイ埼玉県予選において、どのチームよりも走り回り、勝利を手にしてきた。
 
 インターハイ出場権が懸かった準決勝の市立浦和戦。この日の気温は30度近くまで上昇し、真夏を思わせる炎天下での戦いとなったが、選手全員が最後までスタミナ切れを起こすことなく、目の前のボールを追い続けた。
 
 開始早々の前半4分にMF新行内一輝のゴールで幸先よく先制すると、後半6分にFW中山歩が決め、2-0とリード。その後、相手の反撃に遭うものの、前からの連動したプレスで受けに回らず果敢な守備を見せ、最終ラインも集中力を切らさず、身体を張った守備と巧みなラインコントロールで堅守を構築した。
 
「彼らには『格好良く勝つことは100年早い』とずっと言っていました。だから、今日の試合のように格好悪く勝ったことを褒めてあげたいですね」と、守屋監督が確かな手応えを掴んだ試合展開で、市立浦和を2-0で下した西武台は、2年ぶり9回目のインターハイ出場を決めた。
 
 準決勝では、2点目を決めたFW中山の運動量がひと際目を引いた。彼は昨年までBチームにいて、FWではなくボランチを努めていた選手。しかし、「技術もなくて、ただ声を出すことや、がむしゃらにボールを追いかけることしかできない選手でした。でも、今年のチームにストライカーがいなかったのもあって、どうせミスをするなら前で気持ちよくミスをしてくれたほうがいい」という守屋監督の考えから、センターフォワードにコンバート。これがズバリ的中した。
 
 今予選では5試合・5得点と高い決定力を誇り、チームの攻撃を牽引。チームメイトも「中山は前から積極的に行ってくれる。点を奪うことよりもそこが一番頼もしい」(主将・MF及川皓平)と、大きな信頼を得るストライカーに変貌した。
 
 結果として、前線から愚直なまでにボールを追いかけ回す中山の姿は、チーム全体で前からボールを奪いに行く意識を芽生えさせることにもつながった。高い位置で連動しながらボールを奪えるようになり、小宮大知、久保龍希、新行内で構成する中盤と、中山が中心になって繰り出すショートカウンターの威力は倍増。手に入れたこの強力な矛と盾が、インターハイ予選を勝ち抜くうえでの大きな原動力となった。

【2014南関東総体photo】埼玉・西武台

次ページ結束力をさらに強めた「朝練」と「チームメイトへの思い」。

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