【小宮良之の日本サッカー兵法書】守勢必至の西野ジャパンは正しい「籠城戦」「心理戦」を仕掛けられるか!?

2018年06月19日 小宮良之

一丸となった戦い方で成功を掴んだ8年前

その戦い方については賛否両論があったものの、日本サッカー界においては最も輝かしい記憶のひとつとして残っている2010年大会。8年後の歓喜の再現はなるか!? (C) Getty Images

 ロシア・ワールドカップを戦う日本代表だが、「守りを固める」というスタンスにならざるを得ないだろう。コロンビア、セネガル、ポーランドは、どこも日本より実力は上。真っ向から挑み、叩き潰せる相手ではない。
 
 しかし、守りを固める、というのは、どういうことだろうか?
 
「日本人が勝つには、数的優位を作らんと難しい。FWがSBの位置まで戻るなんて、俺のなかではありえんよ。でもあのチームは、ひとりでもわがままをしたら破綻していた」
 
 南アフリカW杯でベスト16に進んだ日本代表のFW大久保嘉人は、そう回顧している。犠牲精神と言ったらいいのか。一丸となった戦い方で掴んだ成功だった。彼は、守るための準備、覚悟をしていた。
 
 サッカーにおける「守りを固める」は、戦場における「籠城戦(城砦戦)」に似ているかもしれない。
 
 籠城戦は、彼我の戦力差を考慮(合戦においては、城を落とすには約3倍の兵力が必要といわれる)。城砦を盾にすることで、戦いを有利に運ぶ。それは、立派なひとつの戦略だ。
 
 籠城戦を制するには、幾つかの条件がある。例えば、堀を深くし、土塁を高くし、櫓を建て、通路をクランクにし、正しく人を配置する。守りのかたちを作り上げ、相手が不用意に侵入してきたら、様々な角度から攻撃し、殲滅する。そして、兵糧と水の手を確保することだろうか。
 
 サッカーにおいても、同じことだろう。
 
 まずは前線でプレッシングしつつ、(プレスを)回避されたら、リトリートしてブロックを作る。FW、MF、DFのコンパクトなラインで挟み込んでは潰し、突破させない。献身的に走り、高い集中力で戦う。高さに対抗できる選手も配置し、横からの攻撃に対しては、中央を固め、徹底的に跳ね返す。
 
 一番大事なのは、守りながらも心理的に受け身に立たない、という点だろう。ラインを上げ、プレスも繰り返すことで、相手を攪乱。攻め手を少しでも断ちながら、危険なゾーンにボールを運ばせない。敵に「攻め疲れ」を生じさせる。

次ページ酷評されようが、それは正当な手段である

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