【コラム】西野監督が全幅の信頼を置く長谷部誠。ただし2戦を通じて明らかになったチームの軸は…

2018年06月10日 加部 究

3バックでは長谷部を活かすヴィジョンが描けていたのか?

指揮官から絶対の信頼を得る長谷部だが、3バックでは彼を活かしきれてはいなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 もし西野朗監督が、本当にポリバレントなタイプを優先するなら、長谷部誠は理想の選手だ。浦和レッズからドイツに渡り、ボランチだけではなく、サイドバック、トップ下、センターバックなど様々なポジションをソツなくこなしてきた。もちろんヴォルフスブルグへ移籍した頃の長谷部は、SBでの出場に納得している様子ではなかった。「出場できることはポジティブに考えたいけれど…」と、複雑な想いも吐露していた。


 一方フランクフルトで直接指導した経験を持つトマス・シャーフ元監督に、長谷部の適性ポジションを尋ねると、こんな答えが返って来た。
「長谷部はゲームを読める選手だ。監督なら、そういう選手を中央に配して置きたいと考えるものだ」

 おそらく日本代表で長谷部がキャプテンマークをつける理由のひとつでもある。ピッチ上で様々な役割をこなし、トップレベルで多角的にゲームを経験してきた。利発で統率力があり、明確なタスクを与えれば、しっかりと咀嚼して応えようとする。

 日本代表監督時代に、イヴィツァ・オシムがこんな話をしていたことがある。
「ロナウジーニョを守備に回してしまえば、ロナウジーニョではなくなる」

 要するに、どんなに強い相手でも、長所を消してしまう戦い方を描ければ、つけ入る隙があると言いたかったわけだ。
 
 西野監督が長谷部に全幅の信頼を置いているのは間違いない。むしろ就任以来の2戦を見れば、依存さえしているという見方も出来る。ガーナ戦で試した3バックも、何より長谷部ありきの実験だったはずだ。だが所属のフランクフルトと同じように長谷部を軸に3人を並べてみたものの、肝心な長谷部を活かすヴィジョンが描けていたかは疑問だ。日本はガーナの1トップに3人が対応する人余り現象が起こり、しかも屈強なE・ボアテングへの対応を何度か長谷部が強いられ、それが2失点目の混乱にも繋がった。

 逆にビルドアップでは十分な余裕があったが、単純な各駅パスしか出せていない。5バックの後傾状態からゆっくりとパス回しが始まるので、斜めのロングフィードでワイドに起点を作るダイナミックな初動は見られなかった。単純に最後尾で数的優位を作るだけの3バックに、長谷部を起用するメリットは見えて来ない。堅守を担保したいなら、別の選択肢でも良かった。
 

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