誰も気付いていないスイス戦の真実。西野監督が目指す「システム使い分け」の準備は整った

2018年06月09日 清水英斗

「良かった」と思っている孫悟空が、実は釈迦の手のひらの上で走り回っていた

サイドハーフとウイングバックに対応できる原口は、システム変更の肝だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 6月8日にルガーノで行なわれた国際親善試合は、0-2で日本がスイスに敗れた。
 
 堅守を持ち味とするFIFAランキング6位のチームを相手に、日本は無得点。そして伝統的にFW不足に悩むスイスが、日本の隙を突き、爆発的ではない2ゴールで勝利。順当な内容、順当な結果だった。
 
 この試合、日本がメインテーマに掲げたのは守備だ。右ウイングで先発した原口元気は、守備の狙いを次のように語った。
 
「完全にリトリートするんじゃなくて、前からハメに行く形を取った。失点するまでは、本当にうまくいっていたと思うし、(スイスは)すごくビルドアップが上手なチームですけど、相手が攻撃しにくい形は作れたなと思います。

(真ん中の相手選手が追うところはきつかったようだが)それをしなきゃ勝てないんで。僕らの運動量が増えるのは承知の上だし。でも、効率良くやれていたと思う。失点してしまって、向こうにも余裕ができた。失点するまでは自分たちのプラン通りに出来たかなと思います」
 
 前半の日本の守備が良かったのかどうか。ここは解釈が分かれるかもしれない。著者自身は良くなかったと考えている。より正確に描写するなら、「良かった」と思っている孫悟空が、実は釈迦の手のひらの上で走り回っていた、という構図だ。
 
 スイスの攻撃は、高い位置へ出て行く両サイドバックが特徴。真ん中にボールを入れ、サイドにスペースを空けて、左からリカルド・ロドリゲス、右からステファン・リヒトシュタイナーが駆け上がる。ワールドカップ欧州予選でも、先日のスペインとの親善試合でも、やはり両サイドバックは攻撃のキーポイントになっていた。原口と宇佐美貴史は、ある程度リトリートし、それを抑える必要があった。
 
 ところが、それによって前線のファーストディフェンスが人数不足に陥る。スイスはMFヴァロン・ベーラミが最終ラインに下がり、3バック化してビルドアップした。大迫勇也と本田圭佑だけでは、カバーの幅が広くなりすぎる。これではハマりづらいのも必然。
 

次ページ効率良く守備をハメる手段を、最初から西野ジャパンは用意している

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事