【スイス戦|戦評】希望なき敗戦。「彼ならやってくれる」という期待は脆くも崩れ去った

2018年06月09日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

今の日本には闘莉王も中澤もいない

本田は限界か。少なくともスイス戦の出来はよくなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[親善試合]日本0-2スイス/6月8日/スタディオ・コルナレド
 
 立ち上がりから良いスタンスで守れていた。大迫勇也がファーストDFになり、トップ下の本田圭佑が上手くパスコースを切る。前線のこのふたりがスイスの攻撃にブレーキをかけたことで、30分過ぎまでは悪くない展開が続いた。
 
 この日の日本は4-2-3-1システムでスタート。大迫と本田に代表されるように、どちらかと言えば守備意識が強く、失点しないサッカーを意図的にやっているように見えた。しかし、そのせいで攻撃はてんでダメ。ボールを奪ってからのスピードも展開力もほとんどなく、ゴールへの予感は漂ってこなかった。
 
 流れを掴めないまま、相手との接触で腰を痛めた大迫が40分に途中交代すると、その1分後にCBの吉田麻也がPKを献上。3月のマリ戦とウクライナ戦、5月のガーナ戦に続き、日本はまたしても先制される苦しい展開を強いられてしまったのだ。
 
 昨年11月のベルギー戦もそうだが、それなりに守れているのに結局のところ、先に失点してしまう。これは看過できない問題だ。
 
 単にディフェンスが弱いだけという見方も十分にできる。今の危機的状況を2010年のワールドカップ当時と重ねて「ベタ引きすればなんとかなる」との向きもあるが、正直、現代表に田中マルクス闘莉王や中澤佑二に匹敵するCBは見当たらない。つまり、10年当時のような鉄壁の守備網を築くには極めて重要なパーツが欠けているということだ。
 
 守れないうえに、攻撃も迫力不足。本職のトップ下で先発出場した本田はことオフェンスに関して言えば「厳しい」のひと言だった。ドリブルでスピードに乗れず、キープしようとしても相手に吹き飛ばされる。後半に何回か敵バイタルエリアに侵入する場面はあったものの、往年の輝きはもはやなかった。「右サイドではなくトップ下の本田ならやってくれるかも」という期待は今回のスイス戦で脆くも崩れ去った。
 
 右サイドの原口元気は対面したリカルド・ロドリゲスに上手く封じられ、左サイドの宇佐美貴史はボールキープもままならないまま途中交代を余儀なくされた。2列目が機能せず、大迫の代わりに入ったCFの武藤嘉紀も必然的に消える時間帯が多く、「手詰まり感があった」(長谷部誠)。
 
 ボランチの長谷部と大島僚太が2列目の3人に展開しても、そこから効果的に崩せない。鋭い縦パスも少なく、横、横に逃げていたら、迫力も怖さも出ないのは当然だ。
 
 結局、試合になっていたのは前半の30分過ぎまで。0-1になってからは明らかにスイスのペースで、日本に反撃する力はなかった。

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