【現地発】スペイン代表のトレーニングに潜入 「4~5分の練習の中に最先端の戦術のエッセンスがぎっしり!」

2018年06月04日 エル・パイス紙

求められるのはクオリティーの高さ。

ロンドを進化させた「5対5+1」のミニゲームを繰り返すスペイン代表。攻守一体となったサッカーをめざす。(C)Getty Images

 スペイン代表は、マドリードにあるラス・ロサス練習場で合宿初日と2日目の両日に、ジュレン・ロペテギ監督の指導の下でロンド(パス回し)の練習を行なった。ロンドと一口で言ってもさまざまなやり方があるが、スペイン代表が実施しているのは極めて難易度が高いそれだ。

 11人の選手が15×20メートル四方のスペースの中で5対5+1のミニゲームを実施。四隅にそれぞれミニサイズのゴールネットを置き、攻撃と守備に5人ずつが2グループに分かれ試合を行なう。エンジ色のビブスを着用した残りひとりの選手が、中央にポジションを取ってフリーマンとなり、臨機応変にボールを保持しているほうのチームをサポートする。

 攻撃側は、2タッチ以内でパスを回すことを条件に、2分間ボールをキープする。一方の守備側はボールを奪うと、四隅のいずれかのゴールネットにボールを入れることが目的だ。2分間経過すると、攻守が交代。そのターンが終わると、一般的なロンドの練習をしながら待機していたもう一方のターンの11人の選手たちと入れ替わる。短時間の中で、高度なスピード、正確性、激しさが要求される練習だ。
 
 ロペテギが想定しているのは言うまでもなく実際の試合だ。最大の狙いはスペイン代表のプレースタイルの根底を成す攻から守、守から攻へのトランジション(切り替え)の精度を、チーム全体で高めることにある。ボールを奪うや前線のスペースを素早く突くだけでなく、隙あらばゴールを狙う。ロペテギがとくに重視しているのは攻撃の際の縦への推進力だ。

 その前提として、守備側のチームには連動したプレス、ボール奪取能力、シュートの正確性が求められる。一方の攻撃側のチームには、パスの精度とスピード、ボールを奪われた後の素早いトランジションによる守備といった能力が要求される。指揮官が理想としているのは、攻守一体となったサッカーであり、ピッチ上の選手全員が統制の取れた動きだ。

 さらにボール練習をメインとしながらも、インテンシティーの高いプレーを要求することでフィジカルの強化にも繋がり、まさにワールドカップの本番を想定した内容となっている。

「ワールドカップは毎試合がマッチボールだ。決勝に駒を進めるチームは、そこまでの7試合すべてにおいて120%のエネルギーでプレーしなければならない。当然、フィジカルコンディションの調整もそうした点を念頭に置いて行なわなければならない。以前はボリュームが重視されていたが、いまではクオリティーを最大限に高めることを目的とした練習メニューが多く組まれるようになっている」

 スペイン・サッカー連盟に所属する著名なフィジカルコーチは、ロペテギの意図を汲みながら最近の傾向をこのように説明する。
 

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