元Jリーガー安英学が挑む”もうひとつのW杯” 在日チームを監督兼選手として牽引する男の想いと勝算

2018年05月26日 ピッチコミュニケーションズ

在日コリアンで結成された「United Koreans in Japan」が"もうひとつのW杯"に参加

昨年9月に監督兼選手のオファーを受けた安英学。当初は迷いもあったと振り返った。写真:安英学提供

 ロシア・ワールドカップの開幕まで1か月を切り、大会への関心が高まるなか、5月31日からロンドンで、"もうひとつのワールドカップ"と呼ばれる大会が幕を開ける。ConIFA(Confederation of Independent Football Associations)ワールドフットボール・カップがそれだ。
 
 ConIFAワールドフットボール・カップとは、チベット(欧州に亡命したチベット人のチーム)や、バラワ(アフリカ・ソマリア東部海岸地域のバラワにルーツを持ち、現在英国に居住する人たちによるチーム)、北キプロス(トルコ共和国のみが承認している未承認国家)など、FIFAに加盟していない少数民族や未承認国家などが出場する国際大会である。
 
 14年から2年に1度開催され、第1回大会ではカウンテア・デ・ニッサ(フランス・ニールの都市限定チーム)が、第2回大会ではアブハジア(実質的にアブハジア共和国として独立状態にあるが、多くの国が未承認の自治区)が優勝。今回のロンドン大会が3度目の開催となる。
 
 そのロンドン大会に、FIFAワールドカップにも出場した元Jリーガーが参加する。安英学(アン・ヨンハ)だ。
 
 02年にアルビレックス新潟でプロデビュー。その後、名古屋グランパス(05年)に移籍すると、06年からは韓国のKリーグへ。釜山アイパーク(06~07年)、水原三星(08~09年)を経て、10年にJリーグ復帰し、大宮アルディージャ(10年)、柏レイソル(11~12年)、横浜FC(14~16年)でプレーした。在日コリアンながら朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)代表にも選出され、10年のワールドカップ南アフリカ大会にも出場した。昨年3月に現役引退を表明し、現在は自身が代表を務めるサッカー教室「Junistar Soccer School」の運営などに携わっている。
 
 今大会には、日本で生まれ育った在日コリアンで結成されたチーム「United Koreans in Japan(UKJ)」の選手兼監督として出場するが、一度は現役を退いた安英学が、ConIFAワールドフットボール・カップへの出場を決めたのはなぜだったのか。横浜市内のホテルのロビーで取材に応じた安英学は、当初は迷いもあったと振り返った。
 
「昨年9月頃にUKJからオファーを受けたのですが、現役を引退した身ですから、正直、まったく迷いがなかったわけではありません。それでも出場を決心したのは、"人と人の間に橋をかける"という大会の理念に共感したからです。
 

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