【W杯キープレーヤー解体新書】ロビン・ファン・ペルシ|世界でもっとも完成度の高いCFのひとり

2014年06月18日 ロベルト・ロッシ

攻撃に多彩なバリエーションをもたらすモダンなストライカー。

スペインとの開幕戦では、同点弾を含む2ゴールを挙げ、チームの勝利に貢献した。 (C) Getty Images

 ストライカーとしてのクオリティーは誰もが認めるところだ。しかし故障が多く、ビッグトーナメントで期待に応えるパフォーマンスを見せた試しはない。それだけに、30歳というキャリアのピークで迎えるブラジル・ワールドカップは、世界トップレベルのCFとしての評価を不動のものにするラストチャンスかもしれない。
 
 183センチ・71キロというバランスのとれた体格に、パワー、スピード、アジリティーのいずれにおいても水準を上回るフィジカル、そして優れたテクニックと強烈な左足のシュートを装備する。モダンなストライカーの代表格だが、元々ウイングの出身だ。アーセナル時代はCFでの起用が増えて以降も、中央に留まるのではなく、前線を動き回り、前を向いてプレーできる状況を作ろうとする傾向が強かった。
 
 だが、キャリアを重ねるにつれてヘディング、ポストプレーといったCFに不可欠なプレーを磨き上げ、世界でもっとも完成度の高いCFのひとりへと成長を遂げる。縦パスが収まる基準点として、クロスに合わせるフィニッシャーとしての役割を、いまでは完璧に実践。敵最終ラインの手前から放つ強力なミドルシュートというプラスアルファも持ち合わせ、チームにとって理想的なCFとして君臨している。
 
 前線で孤立する状況下で、あるいは2ライン(DFとMF)間でボールを受けてから、単独で決定的な仕事をこなすタイプのストライカーではないため、真価を発揮するためには、さまざまな形で絡み援護してくれるアタッカーの存在が不可欠となる。その意味でも、サイドからクロス、あるいはカットインして2ライン間からラストパスを送るロッベン、バイタルエリアへとスルーパスを通すスナイデルは理想的なパートナーと言える。
 
 CFのセカンドチョイスのフンテラールは、ファン・ペルシに比べてクロスに合わせるヘディングの強さ、得点感覚で上回るものの、足下のテクニックやポストプレーの質で及ばない。そのためファン・ペルシを欠くと、組み立てや崩しのクオリティーが著しく低下。クロス以外に攻撃のバリエーションがなくなり、単調で予測可能な攻撃へとスケールダウンしかねない。まさに代役不在のキーマン。ファン・ペルシはオランダ代表にとって、そういう存在なのだ。
 
分析:ロベルト・ロッシ
構成:片野道郎

※『ワールドサッカーダイジェスト 出場32か国戦術&キープレーヤー完全ガイド』p26より抜粋。
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