「お前が上に行きたいならこれからだ!」ハンブルク伊藤達哉を発奮させた“先輩・高徳”の熱き助言

2018年05月04日 了戒美子

自身のインスタなどで弁明に追われた“兄貴”

実質プロ1年目の伊藤(右)に寄り添い、ピッチ内外で支えとなっている酒井(左)。頼れる兄貴の存在はやはり大きい。(C)Getty Images

 ハンブルガーSVの伊藤達哉に注目が集まっている。
 
 先週末のブンデスリーガ32節、ヴォルフスブルク戦では果敢な仕掛けから先制PKをもたらし、1アシストも記録して2得点に絡んだ。窮地のチームに残留への光を灯したのである。試合後にはフランクフルトのマネジャーで、日本でも有名なフレディー・ボビッチ氏が「イトウに関してHSVにコンタクトした」と報じられた。
 
 昨年末に2021年まで契約を延長したばかりだが、この世界ではなんら保障にはならない。年齢が若く契約の残り年数が長い選手であれば、多くの移籍金を獲れると、大抵のクラブは考えるもの。市場価値のある選手なら移籍金なしで移籍するのではなく、所属クラブにきちんと収益を残して旅立つのが筋だ。将来また、古巣に戻ることもあるだろう。立つ鳥跡を濁さず、といったところか。

 
 とはいえ、伊藤の去就に注目するのはもう少し先でも良いだろう。なにしろ、今シーズンデビューしたばかりの選手だ。ツヴァイテ(セカンドチーム)でスタートしたこともあり、「1分でも(トップで)出場できればいいシーズンにする」と決めていた。だがチームは開幕2連勝を飾ったものの、直後に4連敗。例年のごとく、残留争いに巻き込まれる予感を早々に漂わせ、伊藤は抜擢登用される。7節のブレーメン戦で初先発を勝ち取ったのだ。
 
 キレキレのドリブルで相手を切り裂き、両足をけいれんして53分に交代。続くマインツ戦でも55分で交代したが、163センチとされる(本人も正確な身長を知らないと言い張る)小柄な選手が、縦横無尽に巨漢選手たちの間を走り回る姿は、HSVのオールドファンの心を掴んだ。
 
 しかし、あまりのスタミナのなさに苦言を呈したのが、ハンブルクの主将で日本代表の酒井高徳だ。「そんな時間で交代していてはチームを助けたうちに入らない」と厳しく言い放った。普段は仲が良く、兄と弟のような関係ゆえの発言だったが、それが現地でも日本でも取り沙汰され、酒井は自身のインスタなどで弁明に追われた。

次ページ16位に食い込んでプレーオフを勝つという筋書きが

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