【現地発】ナポリは「初めての極限状態」を乗り越えられるか…どうなるスクデット争い?(後編)

2018年04月25日 片野道郎

ユーベの躓きでナポレターニの熱狂に火が付いた。

会心の一勝を挙げ、快哉を叫ぶナポリの面々。彼らを支えたのは愛するクラブを擁護し続けてくれたサポーターや地元マスコミだった。 (C) Getty Images

 4月22日に行なわれたセリエA第34節のユベントス戦でナポリは、後半アディショナルタイムにカリドゥ・クリバリが渾身のヘディングシュートを決めて1-0で勝利。スクデット争いを大きく左右する天王山を制した。

 これにより両チームの勝点差は1ポイントに縮まり、7連覇を目指す絶対王者ユーベにはここ数シーズンになかった逆風が、一方のナポリには明らかに追い風が吹いている。

 ナポリのここに至るまでの流れは、ユーベとは実に対照的だ。マウリツィオ・サッリ体制3年目を迎えた今シーズンは、極限に近いレベルまで高まったチームの戦術的完成度を最大の武器に、世界中のエキスパートから賞賛される質の高いサッカーを見せ、前半戦から2月末までほぼコンスタントに首位の座を保ってきた。
 

 ところが、日程的に重荷になり始めたヨーロッパリーグで決戦トーナメント1回戦で敗退し、シーズンの第1目標であるスクデット狙いに専念できると思われた3月、ローマ(27節)に4得点を許して首位から陥落したのをきっかけに、その後の5試合で3つの引き分けと取りこぼしを続け、4月15日のミラン戦(32節)が0-0に終わった時点で、首位ユーベに6ポイント差をつけられてしまったのだ。

 この時点で、「もしかすると今年こそは…」と息を飲みつつ、チームの戦いぶりを見守ってきた地元のマスコミやサポーターの間には、諦めの空気が広がった。それでも、例えばローマのように「可愛さ余って憎さ百倍」とばかりに監督や選手に批判が集中するのではなく、むしろ、愛するチームを擁護するような論調が(マスコミはもちろんSNS上ですら)強いのが、ナポリの特徴である。

 しかし、4月19日の33節で、ユーベが降格ゾーンにいるクロトーネと1-1で引き分けるという取りこぼしを演じて勝点差が4に縮まり、直接対決で勝てばスクデット争いに再び火がつくという状況になるや否や、それまで殊勝にも自重を続けていたナポレターニの熱狂に火がついた。決戦前日のナポリ空港には、トリノ遠征に向かうチームを見送るために2000人を超えるサポーターが集まり、チャントと発煙筒で激励した。

 そして、そのユーベ戦は、はなから引き分け狙いで守りを固めてきた相手に対し、粘り強い縦のパス交換で相手を揺さぶりながらスペースをこじ開けようと試みるいつもの戦いを貫いたナポリは、創出した決定機こそ少なかったものの、90分を通して主導権を握ってゲームを支配。そして、最後の最後でもぎ取ったCKからクリバリが驚異的なヘディングシュートを叩き込んで、貴重きわまりない勝点3をもぎ取ったのだ。

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