「すまない、アンドレス!」フランスの老舗専門誌がイニエスタに謝罪した理由

2018年04月25日 山本美智子

「利他的な振る舞いが受賞を阻んだ要因」と説明。

イニエスタがバロンドールにもっとも近づいたのが、スペイン代表のW杯初制覇に貢献した2010年(写真)。メッシに敗れて2位に終わった。同じく最終候補に残った2012年は3位という結果に。 (C)Getty Images

 バルセロナが4年連続30回目のコパ・デル・レイ制覇を成し遂げ、アンドレス・イニエスタが優勝カップを掲げてからの数日間は、このキャプテンの退団発表まで秒読み段階に入ったこともあり、連日のようにイニエスタに関する話題が新聞各紙を賑わせている。

 現地時間4月24日には、フランスのサッカー専門誌『France Football』のディレクターであるパスカル・フェレ氏が、同誌主催の「バロンドール」(世界最優秀選手賞)をイニエスタが一度も受賞できなかったのは、自分たちに責任があると、同誌の最新版で謝罪したことが大きな話題を呼んだ。

「Perdon, Andres」(すまない、アンドレス!)と付けられた見出しの記事内で、フェレ氏はイニエスタほどの選手がバロンドールに選ばれないという、この不公平な決定を下しつづけてきたことを謝った。

「イニエスタが持つもっとも素晴らしい才能、それは周囲の選手を輝かせられる点にある。もし彼がいなかったら、リオネル・メッシはバルサに、もっとずっと早く疲れていただろう」

 イニエスタの存在なしには、現在のメッシの活躍もなかったと分析したうえでフェレ氏は、「そのあまりに利他的な振る舞いにより、もっと大きく認められるべきものが奪われたのは確かだ」と、イニエスタの"他の選手を生かすプレースタイル"が、逆にイニエスタ自身の受賞を阻む要因になったと説明している。
 
 そのイニエスタは、1年前からオファーがあるという中国のクラブへの移籍が、今週にも発表されると言われているが、これにはイングランド方面から「待った」がかかっているようだ。

 真っ先に声を上げたのは、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督。スペイン紙『AS』は、このかつての恩師が、「中国に行くなら、シティに来い」と、本気でイニエスタを説得していると24日の電子版で報じている。

 また『AS』紙は、アーセン・ヴェンゲル監督の後任として、来シーズンからアーセナルを率いるのではないかと言われている前バルサ監督のルイス・エンリケも、自身の立場が固まり次第、イニエスタの獲得に乗り出そうとしているようだとも伝えている。

 さらに、パリSGからもオファーが届いているらしく、去就について発表できずにいるのは、こういったオファーが殺到しているせいだという。どうやら、イニエスタ自身がみずからの将来についてすべてを語るまで、こうした周囲の喧騒は収まりそうもなさそうだ。

文●山本美智子(フリーランス)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事