“暗黙の了解”よりも特筆すべき高倉采配! なでしこは大一番でなぜ覚醒できたのか?

2018年04月14日 西森彰

カギを握った阪口夢穂のポジショニング。前方に上がり、攻守両面で活性化

豪州戦では、宇津木がディフェンシブな位置に入ったことで阪口の攻撃力がより発揮される場面が増えた。(C) Getty Images

 中東の地・ヨルダンで、なでしこジャパンがようやく誇りを取り戻した。
 
 女子アジアカップのグループBは予想通りの大混戦。準決勝進出をかけて、オーストラリア女子代表=マチルダスと対戦した日本は、これと堂々と渡り合って1-1のドロー。
 
 この結果、オーストラリア、日本、韓国の3チームが勝点5で並んだが、当該国同士の総得点数がモノを言って、オーストラリア、日本が決勝トーナメントへコマを進めることになった(グループ内総得失点差で1位オーストラリア、2位日本)。
 
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 ベトナム、韓国との2戦を消化して1勝1分け。グループリーグ突破には1点とっての引き分け以上が条件となるオーストラリア戦。この大一番で、なでしこジャパンはようやく覚醒した。
 
 今大会の阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)は、2枚のセンターバックの前で守備的にプレーしてきた。このオーストラリア戦まで温存されていた宇津木瑠美(シアトルレイン)がボランチに入った。これで、阪口夢の負担は大幅に軽減され、攻撃に絡む回数も増えていった。
 
 また、攻撃陣も岩渕真奈(INAC神戸レオネッサ)だけでなく、ターゲット役の菅澤優衣香(浦和レッズレディース)を含めてよく動いた。中島依美(INAC神戸レオネッサ)、負傷明けの長谷川唯(日テレ・ベレーザ)もサイドだけでなく、ピッチを幅広くフォロー。ピッチ全体で互いの距離バランスも改善され、こぼれ球も日本の選手がことごとく拾う。
 
 球際の強さも、前2戦とはまったく違っていた。体格差の違いに臆することなく、個々の選手が渡り合い、フィジカルで押し切られることがない。笛の傾向に対応したのか、あるいは体格差によるものなのか、競り合いの中でのファウルも減った。足もとへのパスに微妙なズレを生じさせていたヨルダンの芝にも、3戦目にして対応。ボールが止まることを計算に入れた、スペースへのロングボールを、効果的に織り交ぜた。
 
 63分に生まれた先制点は、そうした要素が絡み合って生まれた。右サイドでつないだボールを、一気に左前方へ運んだところに宇津木、岩渕が顔を出してオーストラリアの守備をかく乱。さらにワンツーで抜け出した長谷川から、ゴール前でフリーになっていた阪口夢へ。敵陣をきれいに崩したゴールだった。
 

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