浦和を離れた那須大亮は、なぜ試合前の“元気玉”をやめてしまったのか?

2018年04月11日 佐藤亮太

背中にバチンと気合を注入! 通称「元気玉」と呼ばれたルーティン。

浦和2年目から続けていた通称“元気玉”。神戸では開幕戦でやったきりだ。その理由とは? 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

「神戸に来て、イチからのチャレンジ。経験があるにしろ、皆の信頼を得て、それから結果を残し、目の前の試合で結果を出したい」
 
 今季、ヴィッセル神戸に加入したDF那須大亮は常に謙虚でまっすぐな選手だ。
 
 4月4日BMWスタジアム湘南で行なわれたルヴァンカップのグループリーグ3節・湘南対神戸の一戦。
 
 3-0で神戸の完封勝利となったこのゲームで、那須はセンターバックで先発フル出場。機動力のある湘南FWの端戸仁。高さと強さのある同FWのイ・ジョンヒョプを抑えた。
 
 那須は2002年に加入した横浜F・マリノスを皮切りに、東京ヴェルディ、ジュビロ磐田、柏レイソル、浦和レッズを経て、神戸が6番目の所属チームとなる。浦和在籍時の13年にはDFながら9得点を挙げ、ベストイレブンにも選ばれた。
 
 昨季まで在籍した浦和では、サポーターから「兄貴」と呼ばれ、親しまれた。そんな那須には、様々な逸話がある。
 
 例えば、持ち前の闘争心あふれるプレースタイルで試合中、鼻骨骨折すること5度。それでも「折れても良い覚悟でやっている」と厭わない。
 
 また公式戦に出る出ないに関わらず、毎度行なわれる過酷な居残り練習。ジャンプ、ステップ、ダッシュと繰り返されるメニューは、自身が納得するまで終わらず、ピッチに倒れるまで自らを追い込む。
 
 その一方、「食べていないと痩せるから」とチームメイトが食べる気が失せるほどの大食漢。1度の食事で5合のご飯を平らげるという。
 
 そして極めつけが通称「元気玉」なるルーティンだ。
 
 浦和時代、先発出場する試合で那須はライン際でスタッフから背中をバチンと気合いを注入され、ピッチに向かい、主審の開始の笛のまさに直前、両腕を天につきあげ、目を閉じ、集中する。
 
 その姿は人気漫画「ドラゴンボール」の主人公・孫悟空が生命の気を集め、その集めた気を相手にぶつける 必殺技「元気玉」そのものだったことから呼ばれるようになった。
 
 この「元気玉」を「特別なもの」とした那須だが、実はその「元気玉」をいま封印している。
 

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