日本代表主将、長谷部誠の言葉から考える。根深き問題をなぜここまで引きずったのか…

2018年04月10日 了戒美子

「僕はいろんな部分を見てる。選手の責任は重い」

ハリル解任後にフランクフルトで取材に応じた長谷部。慎重に言葉を選びながら、日本代表主将としての想いを明かした。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の解任と、西野朗前技術委員長の新監督就任発表を受け、長谷部誠が口を開いた。前日4月8日の試合後、公式発表はまだなく、報道が先んじた時点では「まだオフィシャルではないので」と慎重だったが、発表後の翌9日はさすがに取材に応じた。
 
 「そうですね……、まあなかなかね……、言葉を選ぶのは難しいですけど……。選手として責任を感じてますし、まず第一にはハリルさんにワールドカップ出場というものを決めてもらったし、いろんな意味で感謝しなきゃいけない部分があるし。いまは、後ろを向かずに前を見てという感じですけど」
 
 誤解を招かないように丁寧に、まずは感謝を口にした。そして、考えながら話す。
 
 「僕はハリルさんに代表キャプテンを任せていただいてこれまでやってきたなかで、選手の責任が一番重いんじゃないかなと思っていて。その、選手の責任が重いなかで、選手のなかでも(キャプテンである)自分の責任が重いと感じてる」

 
 主将としての責任を強調しつつ、こうも言う。
 
「(田嶋幸三会長が解任の一因とした)コミュニケーションの部分では、いろんな部分で監督とは試行錯誤してきて、まあ本音で監督とはいろいろ話し合ってきました。そのなかでこういう結果になったのはひとつ、自分は大きな責任を感じてます」
 
 とはいえ、監督交代に驚きはなく、昨日今日に降って湧いた話でもなさそうだ。3月のベルギー遠征後、一気に事態が動いたのかという問いに対しては──。
 
「そういうことでもないと思いますね。本当になんでこのタイミングなんだって思われるかもしれない。応援されてるかたも(報道の)みなさんもそうだと思うんです。ただ、僕はいろんな部分を見てるので、考えると選手の責任は重いなと感じます」
 
 ハリルホジッチ前監督への不満や、戦術への異議、いわゆる不協和音は我々にも早い段階から漏れ伝わってきていた。だが、それはある程度だれが監督を務めようと起こり得ること。そのうえで長谷部の言葉からは、選手たちの不満をキャプテンである自分のところで食い止められなかった悔しさが感じ取れる。解任、監督交代がこんなタイミングになってしまった。世間が疑問を持つことに理解を示しつつ、一方でそうした動きは以前からあったのだと、本来は触れなくてもいい部分も包み隠さない。実に根の深い難しさを抱えていたのだろう。
 
 本番まで残り2か月強。選手や現場は長谷部の言う通り、「後ろを向かず前を見て」進む必要があるが、やはりどうして、なぜこのような根の深い問題をここまで引きずってしまったのかを、同時並行で検証していく必要がある。
 
取材・文●了戒美子
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