英サッカー専門誌の熟練記者がハリル解任にモノ申す!「選考の基準はどこに置くの?」

2018年04月09日 マイケル・プラストウ

去年の11月が解任のラストチャンスだった

アジア予選では最後に帳尻を合わせ、再度評価を高めたハリルホジッチ前監督だったが……。その後の親善試合では一向に振るわなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の電撃解任をどう受け止めるべきか。
 
 まずはなにを置いても、ベルギー遠征自体が失敗だった。チームの総合力も、結果も、期待感を抱かせるような発見も、ポジティブに捉えられるものはほとんどなかった。守備面で単純なミスを頻発させ、攻撃においてもチャンスを作るに至らない。マリとウクライナのディフェンス陣は日本の攻撃をなんら脅威には感じなかっただろう。この調子なら、ワールドカップ本番は3連敗もあり得る──。誰もがそんな危機感を抱いていたはずだ。
 
 今回、日本サッカー協会は解任に踏み切ったわけだが、課題が少なくない。それが正当な判断なのかどうかはさておき、はたして新しく指名された西野朗監督になにを期待できるできるだろうか。あまりにも与えられる時間が少ない。あの『ドーハの悲劇』から『ジョホールバルの歓喜』までの間に起きた混乱が脳裏に浮かぶ。ファルカン監督、加茂周監督が解任の憂き目に遭い、結局は岡田武史監督の下で、日本代表は初のワールドカップ出場を決めた。

 
 とはいっても岡田監督には、半年以上の準備期間があった。その前例から考えても、やはり解任するなら、最後の最後のチャンスは去年の11月だったと思う。ブラジル、ベルギーとの連戦で完膚なきまでに世界のトップレベルを見せつけられたあの2連戦だ。新政権へ舵を切るならまさにあそこが最適のタイミングだった。その後もE-1東アジア選手権、3月遠征で5試合を戦い、こんな時期にまで判断を先延ばしにしてしまったのだ。新監督に多くは望めまい。
 
 これがクラブチームなら、新指揮官という新鮮な空気を入れるだけで、結果が良くなる場合がある。選手のモチベーションが一度リセットされるからだ。しかし代表チームはそう簡単には行かない。スタメンを固定できるわけでなく、つねに長い目で候補選手たちの力量を幅広く見定め、同時に新陳代謝も図らなければならない。限られた活動期間の中でだ。
 
 ましてや、ワールドカップ本大会が目前に迫る。選手はもちろん誰も彼もアピールに燃えていただろう。不遇だった選手たちにとっては朗報かもしれないが、彼らにしてもどうアピールしていいかが分からないだろう。新指揮官は選手をテストするゲームがほぼなく、本大会に臨む登録メンバーを選ばなければならなくなった。いったいどのような論拠に基づくのか。大きなクエスチョンマークが付く。

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