【ベルギー遠征の真実】ハリルジャパンは一枚岩になれていなかった

2018年04月09日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

現在の低迷が戦術面だけの問題かと言われれば…

ワールドカップ出場決定以降、代表戦で結果を残せていないハリルホジッチ監督。写真:サッカーダイジェスト

 3月の代表戦の舞台となったリエージュ到着日(3月20日)のすっきりしない空模様のように、日本代表に漂うムードもどこかどんよりとしていた。本田圭佑がマリ戦2日後の同25日に「発言自体が右肩下がり」と言うとおり、選手の話を聞いてもネガティブなコメントが目立ち、それに応戦するかの如くヴァイッド・ハリルホジッチ監督もウクライナ戦の前日会見(同26日)では不満を漏らしていた。
 
「少し発言が多いのは気になりますね。メディアの皆さんはスキャンダル、あるいは話題になるものを探している。もちろん我々のところで問題があれば内部で解決すべきです。外部への発言は良くありません」
 
 チームには少なからず、問題がある──。それを指揮官自らが認めたようなものだ。事実、今回のベルギー遠征で垣間見えたのは、ひと言で言えば混乱だった。ロシア・ワールドカップの開幕(6月14日)まで残り3か月を切っても、ハリルジャパンは一枚岩になれていなかったのだ。
 
 今遠征でなにより酷だったのは、ピッチで結果を出せなかったことである。マリ戦は終了間際にどうにか追いついて1-1のドロー、続くウクライナ戦は1-2の敗戦。たとえ内容が悪くても勝利さえ収めれば、拠りどころができた。しかしロシア・ワールドカップに出場しない2か国との対戦で突きつけられたのは、1分1敗という残酷な現実だった。
 
 本田は、ウクライナと戦う前から日本サッカーの脆さを指摘していた。
 
「困った時に集団って、原点回帰できるものがあったりするんですけど、普通は。それが今、日本のサッカーにはない。それが脆さなのは事実ですよね。普通は簡単に立ち返れる場所がある、楽な道があるんですけど、その楽な道が(日本サッカーには)今ないんですよ」
 
 まさにその通りで、今回の結果を受け、ハリルホジッチ監督のサッカー──縦への速さやデュエル(フランス語で決闘の意)にこだわる戦い方──で勝てるのか、という疑念が渦巻いていた。
 
 監督と選手の間にプレーイメージのギャップがあるのは確かだ。MFの森岡亮太が「それは観ていても分かると思いますし、(自分が)感じることも多い」と証言した点からも、容易に理解できる。しかし、現在の低迷が戦術面だけの問題かと言われれば決してそうではない。
 
 見逃してはいけないのが、マリ戦もウクライナ戦も戦術云々の前に個の勝負で劣勢を強いられた点だ。もちろん、マリ戦でポストプレーが素晴らしかった大迫勇也、同点弾を叩き込んだ中島翔哉、ウクライナ戦で美しいFKから槙野智章のゴールをアシストした柴崎岳など個人技が光る選手もいたが、全体的には低調。本田が「大前提」という個のところでさえ歯が立たなかったのが実情だ。
 
 象徴的だったのが、ウクライナ戦の2失点目。ドリブルで仕掛けてきたイェヴヘン・コノプリャンカ(シャルケ)に右SBの酒井高徳とボランチの山口蛍がぶち抜かれ、このサイドアタッカーのクロスから最終的にオレクサンドル・カラファエフ(ゾリャ・ルハンシク)に蹴り込まれた69分のシーンだ。日本の右サイドからゴール前にクロスを入れられた時点で、「4人対6人」と数的不利に陥っており、お手上げに近い状態だった。
 
 もちろん劣勢時にチームを立て直せなかったハリルホジッチ監督にも責任はあるが、ピッチでプレーしているのは選手たちだ。立ち上がりからコノプリャンカには何度も日本の右サイドを攻略されていたのだから、そこからチャンスを作られないよう、臨機応変に振る舞うべきだった。
 

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