“第2のチャナティップ”誕生を目指して――元G大阪・木場昌雄氏が関わるタイ育成年代の現状

2018年04月05日 佐々木裕介

「タイは今まさに“海外に出て行こう”というタイミングになっている」

タイの育成年代の選手たち。プロチームの育成組織も徐々に整備され、レベルアップも顕著だ。写真:佐々木裕介

 開幕して1か月が経ったJリーグで、タイ人Jリーガーが衝撃を残している。韓国やオーストラリアに続き、今後はタイ人選手たちがアジア市場のなかで存在感を見せていくのだろうか。
 
 3月下旬、そんな新たな局面を迎えつつあるタイで、今年で4回目となる育成カテゴリーの国際親善大会「U-15 ASEAN Dream Football Tournament 2018」が行なわれた。
 
 4か国20チームが参加、日本からは、大宮、清水、C大阪、神戸、讃岐、愛媛のU-15チームが出場した。東南アジア独特の高温多湿な気候、芝が生え揃っておらず球の走らないピッチ、ローカル優位な笛など、どれも日本では経験しい得ない"東南アジア基準"に悪戦苦闘する日本人選手の姿を目にしたが、どれも良い経験になったに違いない。
 
 首都バンコクから北へ車で30分程、未来を担う原石を確認すべく、ノンタブリー県へと足を延ばした。天然芝4面にクラブハウスや観戦スタンドを併設した会場、ここはタイの強豪、ムアントン・ユナイテッドFCが保有する、トップチームも練習に利用している施設だ。
 
 そして、ASEAN地域でのグラスルーツ活動に尽力され、今大会のアドバイザーを務めるのが元ガンバ大阪の木場昌雄氏(※選手生活最後をタイでプレー)だ。2012年6月からはJリーグ・アジアアンバサダーを務める同氏に、タイの育成年代の現状について話を聞かせてもらった。
 
 
――タイの育成年代の現状について、感じていらっしゃるままに聞かせていただきたいのですが。
 
「元々は学校クラブが主体のタイにおいて、近年はプロチームが持つアカデミー組織も徐々に整備されてきている状況でレベルも上がってきてはいると思います。しかし育成年代における国際経験が絶対的に足りていないようにも感じています。なので、タイの子たちにも国際経験を積んでもらえればという気持ちで取り組んでいるのがこの大会なんです」
 
――Jリーグには今季、5人のタイ人選手が在籍、タイサッカー界にとってひとつ新時代へ突入したように思いますが。
 
「国のトップ選手がJリーグで挑戦しているタイサッカー界では、今まさに"海外へ出て行こう"というタイミングになってきていて、交流し易いアジアの国々とともに切磋琢磨することがより一層のレベルアップへつながると思うんです。またそれは"基準が国内"になってしまっている指導者にも言えることで、海外の状況を知り、選手とともにレベルアップを図っていかなければ発展はないとも思っています」

次ページユース世代のタイ人選手に対してJクラブ指導者からは「普通にできるね」との評価も。

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