17歳の中村敬斗、菅原由勢らの抜擢に透けて見える“良いものを早く世に出そうという冒険心”

2018年03月12日 加部 究

ダ・ゾーンマネーで各クラブが「本気」で補強に乗り出したという見解もあるが……。

J1開幕節のG大阪対名古屋では10代の若手タレントが3名出場。中村敬斗(38番)、菅原由勢(41番)は、ともに新高校3年生となる17歳だ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 平昌五輪のスノーボードが痛快だったのは、誰も安全策を採らなかったからだ。男子ビッグエアで予選をトップ通過したマーク・マクモルス(カナダ)は、最初に4回転半の大技に挑み転倒したのに、2度目も同じ技に挑み脱落した。同じく優勝候補のマックス・パロット(カナダ)も、最終試技で難易度を落とせばメダルは可能だったのに、あえて5回転に挑んだ。この種目は3度の試技で上位2度の合計点を競うのだが、女子で2度とも着地に成功したのはふたりだけだった。新しい競技なので駆け引きが未成熟という見方もあるかもしれないが、極端な結果至上に走らず、全員が自分の最善を出し切ろうとする価値観が新鮮だった。
 
 ブラジル帰りの知人からメールが届いた。
 
「日本のサッカーは、すぐに後ろに下げる安全なボール回しばかりでつまらない。Jリーグ経験のあるブラジル人の監督に話したら、私もそう思う、と言っていました」
 
 チームを勝たせたい大人が子どもたちの「ミスする権利」と「チャレンジ精神」をはく奪しているという指摘は、多方面から散々耳にする。その反動なのか、窮屈な部活からドロップアウトした子に限って、遊びのミニゲームでボールを離さない。
 
 もっとも安全策に偏るのは、必ずしもピッチ上ばかりではなさそうだ。今年のJクラブの戦力補強を見渡して、鮮度の低さに愕然とした。ダ・ゾーンマネーが入り、各クラブが本気で補強に乗り出したとの見解もあるが、実はこの「本気」が曲者だ。
 
 確かにレアル・マドリーやバイエルンなどキャリアの終着点になるクラブを見れば、即戦力の高額補強が目立つ。ただしこうしたクラブでも常に代謝は繰り返しているし、ビッグネームでも少しでも期待を裏切ればユニホームを脱いでいく。逆に強化責任者は、絶えず若くて伸びしろのある素材に目を光らせている。
 
 ところが大半のJクラブの「本気」は、計算のできる選手の補強ばかりに傾いているように映る。J1の開幕戦のベンチ入り18人の平均年齢は、概算で27.2歳。さらに怖しいのはJ2の平均も、ほとんど変わらないことだ。
 

次ページ開幕スタメン平均年齢が最も若いのは札幌の24.18歳。

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