【現地発】これは新たな発見だ!「名マネジャー」ジダンが「勝負師」として覚醒!

2018年03月10日 エル・パイス紙

力強く明瞭に響いた指揮官のメッセージ。

パリでは珍しく感情を露に指揮を執ったジダン。この一戦にかける指揮官の強い気持ちが前面に出ていた。(C)Getty Images

 2016年1月にレアル・マドリーの監督に就任して以来、マネジャーとしての手腕がクローズアップされてきたジネディーヌ・ジダンが、チャンピオンズ・リーグのパリ・サンジェルマン戦の第2レグで、戦術家としても優秀であることを実証した。

 戦略面に加え、この試合で光ったのが「名を捨てて実をとった」采配だ。今シーズンを左右するもっとも重要なゲームで、しかも相手はかつての自分たちの跡を辿るように、スター選手をかき集め、欧州の盟主の座をめざすパリSG。だからこそ、指揮官が選手とクラブの上層部に対して発したメッセージは、力強く明瞭に響いた。

 
 とりわけ特筆に値するのが、コンディションが万全でないトニ・クロース、ルカ・モドリッチを無理して起用せず、ネームバリューのあるイスコとガレス・ベイルを押し退けて、マテオ・コバチッチ、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオの3選手を抜擢した決断だ。他にもケイラー・ナバス、ダニエル・カルバハル、カゼミーロ、ラファエル・ヴァランヌと、ゴージャスさとは無縁の、チームではバイプレーヤー格の面々がスタメンの大半を占めた。

 ジダン監督は就任以来、ことあるごとにBBC(ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの3トップ)を擁護するコメントを残してきた。したがって、この試合でも、政治的判断を元に、BBCを筆頭としたこれまで通りのスタメンを用意したとしても不思議はなかった。

 しかし今シーズンの低迷が、彼の中で変化の必要性を呼び覚ましたのかもしれない。すでにリーガの優勝争いから脱落した段階でのリアクションは遅きに失した感もなくはないが、少なくともまだチャンピオンズ・リーグについては優勝の可能性が残されている。

 マドリーの監督として正念場を迎えていたまさにこのパリSG戦で、ジダンは選手たちを守るために強権を発動させた。もとより選手時代の威光も重なり、クラブのレジェンドとしてのカリスマ性、求心力の高さには定評があった。今冬の移籍市場でケパ・アリサバラガ(アスレティック・ビルバオGK)の獲得を断固拒否するなど、現有戦力を信じて戦っていこうとする姿勢は、そんなジダンの決意の表われであったはずだ。

 それは確固とした信念に基づいた現状分析により、パリSGとの決戦に向けて粛々とローテーションを導入しながら、チームの再構築を進めていた事実からも伺える。
 

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