FW? トップ下? ボランチ? ポドルスキの“トリセツ”をひも解いて見えてくるのは?

2018年03月04日 白井邦彦

「我々のやろうとしていることを一番理解しているのは彼です」と吉田監督。

FW登録ながら神出鬼没な動きでゲームに関与するポドルスキ。チームが目指すサッカーを最も理解している選手だと吉田監督は語る。写真:川本 学

 天然と人工を合わせたJリーグ初のハイブリット芝のピッチで行なわれたヴィッセル神戸のホーム開幕戦。日本サッカー界に新たな歴史を刻んだが、試合は神戸が2-4で敗れる残念な結果になった。
 
 試合後、清水エスパルスのヤン・ヨンソン監督は「手数をかけず効果的に得点できた」とにこやかに話した。逆に神戸の吉田孝行監督は「前半の2失点がすべて。完全に自滅」と渋い表情を浮かべた。
 
 その両監督のコメントが集約されているゴールが、26分に北川航也が決めた清水の2点目だろう。石毛秀樹が神戸のパスミスを見逃さず、ボールを奪ってドリブルで持ち込み、中央の北川へグラウンダーのパスを通した。このゴールは神戸が「完全に自滅」し、清水が「効果的」に得点した最たるものだった。
 
 だが、ここからの神戸が面白かった。32分に田中順也がヘディングで1点を返すと、息を吹き返したように神戸の攻撃が機能し始める。その中心にいたのがルーカス・ポドルスキである。
 
 少しおさらいしておくと、すでにメディアでも話題になっている通り、今季の彼は昨季以上にポジションが分かりにくい。登録はFWで、スタートは2トップの一角にいることもあるが、試合が始まればトップ下やボランチの位置でゲームを組み立てる時もある。交代選手によっては、左サイドハーフでプレーする時間帯まである。
 
 ただ、既存フォーメーションの枠組みにはめにくいため、時には批判の声が上がることも。神戸は、いまだポドルスキの"トリセツ"解読に苦戦しているのか?
 
 だが、吉田監督は「我々のやろうとしていることを一番理解しているのは彼です」と公言する。そこには"わがまま"ではなく"戦術"が存在しているということだ。
 
 吉田監督が現役選手だった頃の話。当時の神戸は4-4-2システムだったが、トップ2枚と両サイドハーフ2枚は、中に入ったり、外に出たり、味方との距離感を考えながら選手たちが自ら動いていた。理想的なユニットが形成されていたと言える。その中でトップに入っていたのが吉田監督。当時は「調子がいい時は前4枚が流動的に動いている」と話していた。もちろん、それを今、このチームでやっているわけではない。が、システムにとらわれ過ぎないサッカーというのは吉田監督の中に元々あるアイデアと言える。
 

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