なでしこも独米も失ったアドバンテージ… 女子サッカーはなぜ群雄割拠の時代となったのか?

2018年03月02日 西森彰

なでしこジャパンの成績下降はなぜ起きたのか?

アルガルベカップの初戦で日本はオランダに2-6の大敗を喫してしまった。なでしこジャパンは世界のトップへ再度浮上できるのか? (C) Getty Images

 アルガルベカップ初戦のオランダ戦は、3年前のカナダ女子ワールドカップの決勝戦を見ているようだった。序盤に自分たちのミスが絡んで大量失点を許し、その後、反撃に出るが、及ばずの敗戦。日本のゴールは、当時も今回も2点。失点は3年前の5から、ひとつ増えたが、これくらいは誤差の範囲内だろう。
 

 なでしこジャパンもチャンスはそれなりに作っていて、それをきちんと決めるべき人が決めて、かつ、ふたつほどあった自分たちのミスからの失点を減らせば、4-4くらいのスコアになる可能性はあった。最近、対戦機会が多いオランダを相手に、熊谷紗希や横山久美ら、欧州でプレーする選手を温存し、国内組に経験を積ませようとした高倉麻子監督の起用が、裏目に出たのも影響している……。
 
 2006年11月23日に行なわれたドイツ戦以来の6失点を消化しようと、思いつくまま、いくつかのエクスキューズを挙げてみた。だが、この試合に関しては、まったく説得力がない。
 
 シーズン中の欧州とシーズン開幕前の日本のコンディション差は、アルガルベカップで負けるたびに持ち出される敗因だが、オランダも負傷した選手が多く、エース格のフィフィアネ・ミーデマーらを欠いていた。守備でドタバタするシーンが目についたが、これはベストメンバーでなかったことも影響しているはず。
 
 そんな状態で6点も叩き込まれれば、細かい条件設定で大敗を糊塗することはできない。現・欧州女王が、7年前の世界チャンピオンを大きく凌駕していた事実を認めないわけにはいかない。
 
 なでしこジャパンの成績下降は、一言で言って「同質に近いサッカーを、より大きく、より速い相手にされるようになったから」だ。
 
 2011年に世界を驚かせるサッカーで優勝したなでしこジャパンは、実質的には10年近くの時間を費やして作られたチームだった。攻守両面で鮮やかに連動し、エンターテインメントとしても成立するスタイル。「こういうサッカーは、一朝一夕には真似できない」と我々も嘯いたが、今思えば、これは勝者の驕りだった。

次ページ「フィジカルの差を攻守の連動でひっくり返す」という前提が崩れた。

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