【番記者通信】一時代の終焉と新監督に課された使命|バルセロナ

2014年05月22日 ルイス・マルティン

「ひとつの時代が終わった」と語ったマスチェラーノ。

優勝を賭けたA・マドリーとの大一番を落とし、無冠に終わったバルサ。来シーズン、新指揮官の下で復活を遂げられるだろうか。 (C) Getty Images

 リーガのタイトルを賭けたアトレティコ・マドリーとの大一番の後、ハビエル・マスチェラーノが報道陣に語った言葉は、バルサの一時代の終焉を表わしていた。
 
「すべては変わっていく。永遠など存在しないんだ。ひとつの時代が終わったってことだ」
 
 マスチェラーノの発言はピッチの上と同じく、いつも真っすぐなものだ。彼はクラブを出て行くかもしれないが、残留して主将になる可能性もある。ルイス・エンリケを知る私は、この新指揮官が後者の選択肢を選ぶ可能性もあると見ている。
 
 L・エンリケの新監督就任を「改革」と見てはならない。それはバルサ・スタイルの「継続」と捉えるべきである。新しい指揮官とともに、バルサは前線からのプレス、積極性、多様性、そして攻撃的なサッカーを取り戻そうとしている。
 
 チームはよりフィジカルになるともいわれるが、私はここ2年間よりもスピードとインテンシティーが加わるだけで、大きな変化はないと見ている。もちろんペップ(グアルディオラ元監督)が成し遂げた6冠を再び実現することは、ほぼ不可能な至難の業だ。しかし、今はマスチェラーノが言うように、前を見るべきなのだ。
 
 バルサに相応しい監督として、ペップとティト・ビラノバと同レベルの仕事をできる人物は想像できない。しかし、L・エンリケはその可能性を感じさせてくれる監督のひとりだ。ファン・カルロス・ウンスエという、かつてフランク・ライカールトとペップと共に仕事をした人物がスタッフに入るのも大きなプラスだ。
 
 アンドニ・スビサレータSDが契約を望んでいたエルネスト・バルベルデは、アスレティック・ビルバオとのプロジェクトを優先。第2候補のL・エンリケに落ち着いたが、バルサを熟知するOBであることには変わりなく、選手時代にはカンプ・ノウのピッチで常に全力を出し切り、ファンからも愛された存在だ。
 
 環境は整っている。タタ・マルティーノ時代に欠けていた、ロッカールーム内の統制は、新たな指揮官とともに訪れるだろう。
 
 マスチェラーノは正しい。たしかに時代は終わったのだ。しかし、現在とは過去の上に成り立っている。数年前のカンプ・ノウにいた、歴史上最高のバルサのかけらは、今もチームの中に眠っている。そのポテンシャルを引き出すことが、L・エンリケに課された使命である。ハードワークとタレントが融合する時、我々は再び輝かしいバルサを目にするのだ。
 
【記者】
Luis MARTIN|El Pais
ルイス・マルティン/エル・パイス
スペインの一般紙『エル・パイス』のバルセロナ番とスペイン代表番を務めるエース記者。バルサの御用新聞とも言えるスポーツ紙『スポルト』の出身で、シャビ、V・バルデス、ピケらと親交が厚く、グアルディオラ(現バイエルン監督)は20年来の親友だ。
 
【翻訳】
豊福晋
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