アルゼンチンの名門クラブで研鑽を積む16歳の大器、ワシノ・ハルキとは何者か

2018年01月15日 加部 究

「カス」だった小学生を変えた、ひとつの邂逅

2年後のトップデビューに想いを馳せる鷲野(右)。昨季までニューウェルスに所属していた“英雄”マキシとの2ショットだ。

 紅白戦を終えると、18歳年代のチームを指揮するエミリアーノ・アキーノ監督が全員を集めて話した。
 
「みんな、ハルキのようなプレーを模範にするんだ」
 
 鷲野晴貴が在籍するのは、少年時代のリオネル・メッシが過ごしたアルゼンチンの名門ニューウェルス・オールドボーイズ。ホームスタジアムには、鬼才マルセロ・ビエルサの名が冠せられ、過去にはガブリエル・バティストゥータやアベル・バルボなど同国を代表する数々の名手を輩出している。
 
 アキーノ監督は言う。
 
「ハルキは、非常にテクニカルなパサー。最大の武器は、相手にとって最も危険な場所に、正確で味方が受け易いタイミングで通せること。最初にこちらに来た頃は、アルゼンチンのサッカーや、チームメイトのレベルに慣れなくて戸惑っていたが、時間の経過とともに見事に順応して、いまでは持っている力を出しながら成長してくれている」
 
 晴貴は、アルゼンチンに来てからの1年間が一気に流れたような気がしていた。
 
「充実し切っていたからでしょうね。ニューウェルスには、まず自分より圧倒的に凄いヤツらがいた。でも逆に負けている自分が伸びしろを見つけられて、嬉しいんですよ」
 
 最初はゴール前に顔を出すことが難しかったのに、気がつけばトップ下として決定的な仕事をするようになっていた。
 
「特に言われたのは、守備についてでした。確かに守備は、自分でも遅れているのが判った。でもニューウェルスでは、守備中心のトレーニングをする日もあり、戦術的にも凄く具体的に説明をしてくれます。そのうちに自分でも"ここに来るな"と読んで、その通りに奪えた時の面白さも覚えてきて、守備にも楽しく取り組めるようになりました」

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