“無茶苦茶”だった流経大柏をいかにして変貌させたのか――キャプテン宮本優太の凄み

2018年01月09日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

「優太君がいないと練習が成り立たない」(関川)。

宮本の高校サッカー生活は準優勝で幕を閉じた。しかし、粘り強く戦い抜いた決勝戦での健闘ぶりは称賛に値するだろう。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権決勝]流経大柏 0-1 前橋育英/1月8日/埼玉
 
 夏のインターハイで優勝、冬の選手権では決勝で前橋育英に敗れたものの、準優勝に輝いた。結果が示すとおり今年の流経大柏は強かった。
 
 そんな好成績を残したチームをまとめ上げていたのが、キャプテンの宮本優太だった。
 
 本田裕一郎監督は言う。
 「評価したいのは成長。夏以降のチームは本当に伸びました。宮本はよくまとめてくれた。そのリーダーシップを評価してあげたい」
 
 発足したばかりのチームはあまりに酷かったと、本田監督は振り返る。
「ボールを取らないといけないという守備からスタートして、最初のうちはファウルだらけで無茶苦茶。しかもゆっくりやっていたら、今度はスピードがなくて攻撃が疎かになる」
 
 宮本もキャプテンに就任した当初は、「あまり勝てなかったし、チーム内の雰囲気も良くなかった」と回想する。それでも今大会が終わってみれば本田監督に「まあまあ満足できるチームになった」と言わせることができたのは、このキャプテンの奮闘があったからだろう。
 
 中盤のいたるところに顔を出して、ピンチの芽を摘めば、こぼれ球をいち早く拾い攻撃に転じるパスを散らす。そんなボランチとしての質の高いプレーもさることながら、何よりサッカーに取り組む真摯な姿勢に、チームメイトは慕い、ついてきた。
 
 2年生DFの関川郁万は「凄いキャプテンだった。チームがどんなに苦しい状況でも人一倍走って、周囲のカバーをしてくれる。優太君がいないと練習が成り立たない。取り組む態度から意識が違う人なので。最後のミーティングでも3年生をまとめていて、素晴らしい人だなと。彼に一歩でも近づきたい」と敬意を払う。
 
 監督からの叱責も、先頭に立って受け止めてきた。本田監督からチームで「一番怒られた選手」であり、時にはかなり厳しい言葉もかけられたという。
 
 それでも「やるしかなかったので、今できることをやろうと」。常にチームのことを一番に想い、勝利のために行動してきた。そんな主将に導かれるようにチームはひとつにまとまり、夏に全国制覇を果たすと、それからも課題だった攻撃面が改善され、今大会でも決勝まで駒を進めてきた。
 
「後悔はないです。本当に3年間苦しかったですけど、こうやって最後に決勝のピッチに立たせてもらって、最高の仲間とやれたことを感謝したい」
 
 流経大柏の躍進には、素晴らしいキャプテンの存在があったのだ。

【男子決勝PHOTO】流経大柏0-1前橋育英 悲願の初優勝!後半AT弾で流経大柏との死闘を制す!
 
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェストWeb)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事