【選手権】「すげぇなって…」上田西の白尾監督が快挙達成の教え子たちに見た成長のあと

2018年01月07日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

力負けを認めつつも…。

勝てなかった悔しさを吐露しながらも、2年間に渡って指導してきたチームの成長に喜んだ白尾監督。 写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権・準決勝]前橋育英 6-1 上田西/1月6日/埼玉スタジアム
 
 力の差は歴然だった。それはスコア以上に総シュート数「1-31」というスタッツが物語っていた。
 
 前日に行なわれた準々決勝では堅守の米子北から3点を奪うなど、好調な前橋育英の攻撃陣を封じるべく上田西の白尾秀人監督は、5-4-1の布陣で臨み、守備固めからゲームに入ったが、前半24分にCKから松田陸に先制点を奪われてからプランはもろくも崩れ去った。
 
 先制点を許した直後にFWの田中悟、そして31分にはロングスローという"飛び道具"を持つFWの田嶌遼介も送り出したが、一度狂った歯車は噛み合うことはなかった。白尾監督は、「もう少し守れるかなと思いましたけど、パスのスピードだったり、ドリブルの切り替えしとか、全てのレベルがこれまで当たってきた相手とは違った」と、試合中に為す術無しという状態に陥ったと試合後に振り返っている。
 
 とりわけ痛恨だったのは田嶌のロングスローを活かせなかったことだ。白尾監督は試合後に、「彼が入っても相手は動じなかったし、外にボールを出さないことを鉄則として全く機能しなかった」と、必殺技が完全に封じ込まれたことも敗因の一つに挙げた。
 
 しかし、上田西がこの冬に成し遂げたことは、ひとつの敗戦によって色褪せることはないはずだ。初戦の2回戦で実力校の京都橘を撃破するなど、一躍台風の目となったチームは長野県勢初の選手権ベスト4入りを果たし、目覚ましい快進撃を見せた。
 
 就任2年目で快挙を成した白尾監督は、「2回戦に勝つことが目標だったチームの気持ちが変わっていった」と教え子たちの成長を感慨深げに話した。
 
「選手たちは上田に、そして長野県にいろいろな財産を残してくれた。高校生の良さはひたむきさや諦めずに食らいつくことだと思う。そのなかで一丸となってやれば、言い方は悪いかもしれないですけど、どんなにレベルが低くても結果はついてくるということは証明できた。あとはウチの選手ってすげぇなぁって思いました。大敗はしましたけど、選手は伸び伸びしていましたし、この大会で一番成長したのはウチだと思います」
 
 普段、土のグラウンドを使っている彼らは、12月から3月ぐらいにかけて雪の影響で、まともに練習ができない日々を乗り越えてきた。そんななかで、選手たちとともに夢の決勝へあと一歩のところまでたどり着いた白尾監督は、「試合後に選手たちに『どう?』って聞いたら『悔しい』って答えてくれた。選手たちは変わった」と、チームの精神的な成長を噛みしめながら大会を去った。
 
取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
 
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