【選手権】「高校サッカーに未練はない」涙を拭った大阪桐蔭主将・西矢健人に見た大物の予感

2018年01月04日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

「止まっていた時計は動かせましたけど…」と悔しさを募らせながら。

実力校、大阪桐蔭のキャプテンとして懸命にチームをリードした西矢(8番)。試合後、その目には涙があふれていた。写真:塚本凛平

[高校サッカー選手権3回戦]大阪桐蔭 1(3PK5)1 明秀日立/1月3日/駒沢
 
 選手権制覇を掲げて9年ぶりに立った全国の舞台で、大阪桐蔭は3回戦で姿を消すこととなった。
 
 前日には羽黒を6-0で下し、初出場となった9年前に達成できなかった2回戦突破を果たしていた大阪桐蔭は、この試合でも明秀日立を圧倒。後半1分には3年生FWの菊井悠介が2試合連続弾を決めて先制もした。その出来は敵将の萬場努監督が、「とにかくボールを持たれ、支配されていた印象しかない」と、総評したほどだ。
 
 しかし、浪速が誇る名門は、後半21分に一瞬のスキを突かれて同点とされると、その後も追加点を奪えずにPK戦へ。ここで3人目のキッカー、2年生の西山翔大が外してしまい3-5で敗戦を喫した。
 
 試合後、「9年前から止まっていた時計を動かせましたけど、やっぱり全国はそう甘くはなかったっすね」と悔しさを募らせたのは、キャプテンである3年の西矢健人だ。
 
「2点目、3点目が取れなかったのが悔しい」と反省した西矢は、後半38分に絶好機を得ていた。2年生DF深澤佑太が右サイドから放ったクロスを頭で合わせると、相手GKの逆を突いたボールは惜しくも右ポストの外側に逸れていった。
 
 この好機を逸した場面については、「あと30センチ先にポストをもうひとつ置いといてくれよって思いましたけど……」と冗談交じりに話した西矢だが、実は自身の状態は万全ではなかった。大会直前の昨年12月15日に行なわれた流通経済大柏とのプレミアリーグ参入戦後に左足内側靭帯を負傷していたのだ。
 
 チーム随一のゲームメイカーは、「1日の練習でも痛かった」という満身創痍の状態だった。ともすれば、欠場も致し方ないなかでのプレーに西矢は、「怪我でずっと休んでいたやつが(選手権に)出るっていうのは、僕が他のみんなの立場やったらホンマに嫌」と話す。

 それでも、「監督やみんなが信じてくれた。全員で勝つことを心がけた」と仲間の後押しを意気に感じて今大会は奮起。初戦の羽黒戦でも先発出場し、40分にはゴールも決めて6発大勝に貢献した。
 

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