【選手権】「秘策」と「飛び道具」が実らず。秋田商に生まれた「一瞬の隙」

2018年01月01日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

プラン通りにゲームは進んでいた。

得意のロングスローを披露した出口。チャンスを作り出したが……。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権1回戦]秋田商 0-1 神村学園/12月31日/NACK
 
「初戦の壁」は、やはり厚かった。
 
 秋田県勢はここ12年連続で初戦敗退。そのうち9回は県内屈指の名門である秋田商が挑み、そして涙を呑んでいる。
 
 13年ぶりの1勝を狙う秋田商は、鹿児島の強豪・神村学園との1回戦を前に、ある秘策を用意していた。清水エスパルス入りが内定している敵のエース髙橋大悟に、マンマークを付けたのだ。
 
 大役を任されたのは、MFの柏谷一輝。予選ではレギュラーというわけではなかった選手だ。
 
 大会直前に小林克監督から命を受け、「何度も映像を見てチェックした」という柏谷は、その重要なタスクを全う。髙橋に「やりづらかった」と言わせるほど、思うように仕事をさせなかった。
 
 小林監督が植え付けたハイプレスも機能し、パスサッカーが信条の神村学園のミスを誘発。ボールは支配されながらも、ペースを握っていたのは間違いなく秋田商だった。
 
 しかし前半終了間際の38分、一瞬の隙が生まれる。自陣で大きくクリアしようとしたMF松野竜士がキックミスをして、敵にボールを奪われると、そのボールが髙橋に渡る。クリアでいったん落ち着けると思ったのか。その瞬間、バイタルエリアで髙橋をフリーにしてしまった。
 
 柏谷が必死に戻ろうとするが、振り向き様に左足でシュートを撃たれ、先制を許す。CBを務めたキャプテンの奈良学が、「あの場面以外は封じていたのに……」と唇を噛んだ痛恨の失点だった。
 
 後半、秋田商は反撃に出たものの、最後の30メートルで精度とアイデアを欠き、神村の守備網を崩せない。前半から脅威を与えていたMF出口陽介のロングスローとプレースキックという「飛び道具」も、ゴールをこじ開けるには至らなかった。
 
 夏に砂浜や山を走って鍛えたという体力は最後まで衰えず、足が止まることはなかった。だがそれでも1点が遠く、無念の3年連続初戦敗退を喫した。
 
 小林監督は試合後、「試合の入りは、このチームになって最高の出来だった。最後まで足を止めずに走り切ってくれた」と選手たちを労った。

次ページ「詰めの甘さが出てしまった」と反省の弁。

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