【セルジオ越後の天国と地獄】サプライズは大久保ではなく、柿谷のほうだ

2014年05月16日 週刊サッカーダイジェスト編集部

名前だけで判断するのはサッカー文化が育ってない証拠。

サプライズ選出と言われた大久保だけど、結果を出しているのだから選ばれて当然。 (C) SOCCER DIGEST

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※週刊サッカーダイジェスト5.27号(5月14日発売号)より
 
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 ブラジル・ワールドカップに挑む日本代表メンバーが発表されたね。ザッケローニ監督が「これまで一緒に戦ってきたこと、積み上げてきたモノを大切にした」と語ったとおり、無難なメンバーに落ち着いた印象だ。
 
 GKは予想どおりの3人(川島、西川、権田)で、中盤は常連の遠藤や本田、香川たちが選ばれた。怪我をしていた長谷部や内田、吉田も入ったね。彼らのコンディションは心配だけど、状態が上がらなかった時の保険として、ボランチでは青山と山口、CBでは森重を呼んだのだろう。2年3か月ぶりに代表入りした大久保も、1トップの柿谷や2列目の香川の代役というところだ。
 
 世間では大久保の選出が騒がれているけど、まったくサプライズではないよ。彼の活躍を振り返れば、選ばれて当然だからね。昨シーズンはJ1の得点王に輝いたし、今シーズンも13節終了時点で8ゴールを挙げて得点ランク2位にいる。今まで選ばれなかったのが、不思議なくらいの選手なんだ。
 
 むしろ、柿谷の選出のほうが、僕にとってはサプライズだ。今シーズンは、まだリーグ戦で1ゴールしか挙げていない不調の選手だよ。調子の良い選手をピックアップする代表チームのセオリーから考えれば、彼は落選してもおかしくなかったんだ。
 
 記者会見では大久保の選出に驚きの声が出て、柿谷の時はなんの反応もなかった。不調な選手が選ばれて当然と思っている人が多いのは、本当に疑問だよね。名前だけで判断して、実際のパフォーマンスには目を向けていないんだ。日本のサッカー文化が育っていない証拠だよ。
 
 まあ、今回のメンバーを見ていくと、不安要素は多いよ。一番は怪我人や不調の選手が多いことだ。長谷部はブンデスリーガの最終節に出場したけど、内田や吉田は実戦に復帰していない。柿谷はリーグ戦で結果を出せていないし、香川に至ってはノーゴールだ。ザッケローニ監督が軸に据えている本田も、ミランで不振に陥っている。レギュラーと見られる選手で好調なのは、マインツで15ゴールを挙げた岡崎とインテルで不動の地位を築く長友くらいだろう。
 
 日本のウイークポイントである高さも不安要素のひとつだよ。前線には大迫くらいしかターゲットになれる選手がいない。それに守備陣も同じだ。これまで今野と吉田がCBを務めてきたけど、どの試合でも同じようにセットプレーやクロスに対して脆さを見せていた。森重は今野よりも空中戦に強いかもしれないけど、世界と互角に戦えるかと聞かれれば疑問だ。加えて、吉田のコンディションが上がらなかったら、どうするのだろう。明らかな弱点に手を打てなかったのは、やっぱり不安だよ。

次ページ怪我人の回復と大久保らの融合が今後のテーマ。

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