【現地発】命の危機を克服したDFのデビュー! 聖夜を彩った奇跡の物語

2017年12月26日 山中忍

選手として脂の乗る時期に…。

常にポジティブにリハビリとトレーニングを重ねたゴールドソン(右)。屈託のない笑顔が似合う男は、過酷な運命にも挫けなかった。 (C) REUTERS/AFLO

 クリスマスシーズンは、1年の中でも人々の心を温めるような"イイ話"が話題に上がる時期でもある。そうしたなかで、今年はプレミアリーグからホットな話を提供した選手がいた。
 
 物語の主人公となったのは、今年12月23日のブライトン対ワトフォード(プレミアリーグ19節)で、マン・オブ・ザ・マッチに輝いたイングランド人DFのコナー・ゴールドソンだ。
 
 ブライトン在籍3年目、25歳のCBは、この試合で念願のプレミアリーグ・デビューを果たしていた。というのも、彼は定期検診で大動脈の異常が見つかり、心臓にメスを入れるという大手術を受けていたからだ。命にも関わる状況を思えば、それは奇跡のデビューと言えるだろう。
 
 その病が発覚したのは、ブライトンが2部でプレミアリーグ昇格を争っていた昨シーズンの後半戦が幕開けして間もない今年1月末のこと。膝の故障から戦線復帰してすぐの時期でもあった。手術で命の危機は回避されるとしても、"選手生命"は絶望的と思われていただけに、当人にすれば、人生の終わりのようにさえ感じられたことだろう。
 
 ゴールドソンは2015年の夏にユース時代から過ごしてきたシュルーズベリー(現3部)を離れ、ブライトンへと移籍した際に、当時、チームの顔役だった元イングランド代表FWのボビー・ザモラに、「クリス・スモーリングを凌ぐ」とまで言わせた逸材でもあった。
 
 選手として脂の乗る時期にキャリアの危機を迎えたゴールドソンだったが、復活への闘志を消さなかった。
 
 闘病生活を余儀なくされた当時から地元メディアで、「ブレイブ・ハート(勇敢な心)」と呼ばれたメンタリティーを持ち続け、今年のプレシーズン期間中に選手としてカムバックしたのだ。
 
 今年の夏の移籍市場で予定されていたイプスウィッチ(2部)へのレンタル移籍が土壇場でキャンセルになり、開幕1か月はベンチにさえ入れない状況が続いたが、自暴自棄にならず、コツコツと練習を重ねた。
 
 そして、ついに訪れたチャンスが、クリスマス前のワトフォード戦だった。CBの定位置を確保しているシェイン・ダフィーの出場停止で、同じ右利きのゴールドソンに出番が訪れたのだ。

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